出産時に医療保険は使える?公的・民間保険のケースにわけて解説

医療保険

公開日:2025年3月18日

出産時に医療保険は使える?公的・民間保険のケースにわけて解説

出産する際に医療保険を使えるか気になっている人もいるでしょう。この記事では、出産にかかる費用の相場や出産時に医療保険が使えるかどうかについて説明しています。さらに出産時に活用できる公的制度や、出産のタイミングで検討したい保険についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

1.出産時にはどのくらい費用がかかる?

出産に際して、費用はいくらくらいかかるのでしょうか。ここでは、出産費用の目安や推移について紹介します。

1-1.全体の費用

厚生労働省が公表している資料「出産育児一時金について」(令和4年10月13日第155回社会保障審議会医療保険部会)によれば、 令和3年度の出産費用は46万2,902円 でした。これは異常分娩を含むすべての出産の平均値です。施設別にみると、 出産費用(平均値)は、公的病院よりも私的病院のほうがやや高くなっています

また、 正常分娩のみの出産費用の平均値は、47万3,315円 です。全体の平均値同様、公的病院よりも私的病院のほうがやや高い傾向があります。

1-2.出産費用の推移

同じく厚生労働省の資料「出産育児一時金について」によると、出産費用は年々増加傾向にあります。 全出産費用の平均値は年間1%前後で増加しています 。今後も同様に出産費用が増加していく可能性があります。出産時に費用面で困らないようにするには、この傾向をふまえて資金を備えておく必要があります。

2.出産時にかかる主な費用の内訳

ここでは引き続き厚生労働省の資料「出産育児一時金について」を参考に、出産時にかかる費用について紹介します。具体的な金額については、令和3年度の実績値となります。

2-1.入院料

令和3年度の入院料は、11万5,776円 でした。平成24年度の入院料は11万112円であり、5%増加しています。

なお、入院料とは出産のために入院する際にかかる室料と食事料のことです。保険診療における入院基本料や入院時食事療養費は含みません。

2-2室料差額

令和3年度の室料差額は、1万7,255円 です。平成24年度の入院料は1万4,653円であり、18%増加しました。

室料差額とは、本人の希望により差額が発生する病室に入院した際にかかる費用です。いわゆる差額ベッド代のことで、差額が発生する病室は特別療養環境室とよばれています。特別療養環境室は、4床以下で、面積が1人あたり6.4平方メートル以上、プライバシーを確保する設備がある、特別な療養環境として適切な設備があるという条件にあてはまる病室です。

室料差額は特別療養環境室を使用しなければかかることはありません。

2-3.分娩料

令和3年度の分娩料は、27万6,927円 でした。平成24年度の入院料は23万920円であり、20%増えています。

分娩料とは、正常分娩する際に必要な医師・助産師の技術料、看護料、介助料などです。

2-4.検査・薬剤料

令和3年度の検査・薬剤料は、1万4,419円 となっています。平成24年度の入院料は1万1,915円であり、21%増加しています。

検査・薬剤料とは、出産のための検査や薬剤にかかる費用です。ただし、療養の給付の対象となる費用が発生した場合、出産の検査・薬剤料には含みません。

2-5.処置・手当料

令和3年度の処置・手当料は、1万6,135円 です。平成24年度の入院料は1万3,336円であり、21%増えています。

処置・手当料とは、妊婦に対する医学的処置、乳房ケア、産褥(さんじょく)指導などにかかる費用です。検査・薬剤料と同様、療養の給付の対象となる費用については、出産の処置・手当料には含みません。

2-6.新生児管理保育料

令和3年度の新生児管理保育料は、5万58円 でした。一方、平成24年度の新生児管理保育料は5万445円で、1%近く減少しています。

新生児管理保育料とは、生まれた新生児の管理や保育のための費用です。具体的には、新生児に対する検査、使用した薬剤、処置、手当などの費用が該当します。

2-7.産科医療補償制度の掛金

産科医療補償制度とは、分娩に関連して重度脳性まひが発症した場合の金銭的な負担を軽減するための制度です。 令和3年度の産科医療補償制度の掛金相当額は、1万5,203円 でした。平成24年度の掛金相当額は2万9,672円であり、約半額に減少しています。これは平成27年に制度が改定され、掛金も見直されたためです。

産科医療補償制度の掛金は妊婦さんが直接負担するものではありません ので、出費として準備は不要です。出産育児一時金等の一部が掛金として財源にあてられているため、厚生労働省の資料「出産育児一時金について」では費用として含まれているものと思われます。

2-8.その他の費用

出産時には、ほかにも文書料(診断書や各種証明書の発行費用)や材料費(分娩キット等)などがかかります。 令和3年度のその他医療外費用は、3万2,491円 でした。平成24年度の入院料は2万5,324円となっており、28%増加しています。

3.出産時に公的医療保険は適用される?

出産時は公的医療保険(いわゆる健康保険)を利用できるのでしょうか。状況によっても異なるため、以下で説明します。

3-1.正常分娩の場合は適用されない

正常分娩に費用は公的医療保険の対象にはなりません。 公的医療保険はケガや病気の治療にかかる医療費の一部をカバーするための制度で、正常分娩はケガや病気に該当しないため対象外とされています。

ただし、出産すれば後述する出産育児一時金が支給されるため、出産費用への公的医療保険からの補助がない訳ではありません。出産にかかる費用は医療機関や受ける医療サービスなどによっても異なり、出産育児一時金で足りない場合は自己負担が必要です。

3-2.異常分娩の場合は適用される

異常分娩となった場合の費用は公的医療保険の対象 になります。異常分娩とは、帝王切開術や吸引娩出術などの処置が必要な分娩です。異常分娩に関して公的医療保険が適用される範囲は、異常分娩にともなう手術、麻酔、投薬、入院などの費用です。これらについては、かかった費用の3割が自己負担となります。

ただし異常分娩の場合でも、入院中の食事代、差額ベッド代(室料差額)、新生児管理保育料などは公的医療保険の対象外であり、全額自己負担となります。

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4.出産時に民間の医療保険は使える?

民間の医療保険に加入していても、通常、正常分娩の場合は給付対象になりません。一方、異常分娩での医療費であれば、入院給付金や手術給付金などを受け取れる可能性があります。実際には、加入している保険の給付条件(約款等に記載)によります。出産にともなって民間の医療保険を活用したいと考えるなら、支払条件を事前に確認しておきましょう。

5.出産時に利用できる公的制度

出産に関しては、いくつかの公的制度を利用することが可能です。具体的にどのような制度があるか紹介します。

5-1.出産育児一時金

出産育児一時金は、出産したときに公的医療保険(健康保険)から支給される給付金です。被保険者または被保険者に扶養されている家族が妊娠4か月(85日)以上で出産した場合に支給されます。この期間に該当すれば、早産や死産、流産、人工妊娠中絶(経済的理由のものも含む)も対象です。

令和5年4月1日以降の出産で支給される1児あたりの給付額は、以下のとおりです。

産科医療補償制度に加入している医療機関において妊娠22週以降に出産した場合 50万円
産科医療補償制度に加入していない医療機関で出産した場合 48万8,000円
産科医療補償制度に加入している医療機関において妊娠22週未満で出産した場合 48万8,000円

※参考: 子どもが生まれたとき|全国健康保険協会

5-2.出産手当金

出産手当金とは、出産で会社を休み、給料の支払いがなかった場合に健康保険(国民健康保険は除く)から支給される手当です。出産日の42日前から出産日の翌日以降56日目までの範囲で会社を休み、給料が支払われていない期間が対象となります。出産日が予定日より遅れた場合は、遅れた期間も対象になります。
また、多胎妊娠であれば、出産日の98日前から出産手当金の支給対象となります。

出産手当金の1日あたりの支給額は
支給開始日以前12か月間の各月の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 2/3
で計算します。

※参考: 出産手当金について | 全国健康保険協会

5-3.高額療養費

高額療養費は公的医療保険(健康保険)の制度で、ひと月の医療費(保険適用分)が限度額を超えた場合に、その超えた金額が支給されます。ただし、すでに触れているとおり正常分娩の場合は保険適用外であるため、高額療養費の対象にもなりません。

一方、異常分娩で健康保険が適用されるケースでは、医療費が高額になった場合は高額療養費を利用できます。

高額療養費の申請には、健康保険高額療養費支給申請書を提出する必要がありますが、加入している健康保険によっては、該当する場合には申請をしなくても自動的に支給されるところもあります。また、医療費が限度額を超えると事前にわかっている場合は、健康保険限度額適用認定申請書を提出して限度額適用認定証を取得しておくと、病院の窓口の支払いでは自己負担限度額までの支払いですみます(保険適用外の費用は別途全額自己負担となります)。

※参考: 高額な医療費を支払ったとき(高額療養費) | 全国健康保険協会

一覧表で早わかり!高額療養費制度の自己負担限度額と申請方法

5-4.医療費控除

医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定の金額を超えている人が利用できる所得控除です。対象となるのは、本人または生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費です。

医療費控除の額は「 実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額-10万円 」です(上限は200万円)。
なお、1年間の総所得金額が200万円までの人は、10万円ではなく総所得金額の5%を差し引きます。

※参考:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除) | 国税庁

5-5.傷病手当金

傷病手当金とは、ケガや病気のために仕事ができない状態となり会社を休んだ際に、健康保険(国民健康保険は除く)から支給される給付金です。 働けない状態であることについて医師の証明 が必要です。

具体的な支給条件は、業務に関係のない病気やケガにより仕事ができない状態での休業で、連続する3日間を含む4日以上休んでいること、また休んだ期間に給与が支払われていないこととなります。

妊娠出産にかかわるケースとしては、切迫流産などで仕事ができない状態となった場合などが対象となる可能性があります。

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6.出産に備えるには民間の医療保険に加入しておくと安心

ここまでの説明のとおり、出産にともなってはさまざまな費用がかかります。基本的には公的な医療保険により多くの費用が軽減されますが、状況によってはカバーしきれない金額も出てきます。出産に関する経済的な不安がある方は、民間の医療保険にも加入しておくとよいでしょう。民間の医療保険に加入していれば、たとえば異常分娩で帝王切開が必要になった場合に医療費の負担を抑えられます。

安心して出産できるようにするために、妊娠前に医療保険の加入について検討しておくとよいでしょう。

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7.子育てにかかわる費用とリスク

子どもを育てるにあたってのいくつかの費用と想定されるリスクについて、かんたんに紹介します。

7-1.子育て費用

子どもの成長に合わせて各種費用が必要です。

0~2歳の乳幼児期においては、ベビーカーやベビーベッドなどのベビー用品の購入費用がかかります。

6~12歳の学童期には、学校教育費や学校外の習い事・塾などの費用がかかります。

さらに、12歳以降の成長期では、学校教育費、クラブ活動費、受験費用などより多くの費用が発生します。高校や大学などで自宅外通学をする場合、別途、子どもの分の住居費など生活費が多くかかります。

7-2.子育てにおける親の死亡・ケガ・病気のリスク

親に万が一のことがあれば、子どもの生活にも影響をおよぼします。たとえば、親が死亡したり、ケガや病気で働けなくなったりすれば、経済的に困窮し生活費や教育費が十分に確保できなくなるリスクがあります。そのような事態を想定し、子どもの生活費や親自身の医療費などへの備えも用意しておくとよいでしょう。

8.出産後に検討したい保険について

出産すると、子どものために負担すべき費用が多く発生します。進学や親に万が一のことがあったときにはまとまった資金が必要になるため、そのような資金の準備として保険の活用もおすすめです。ここでは、出産後に検討しておきたい保険について紹介します。

8-1.学資保険

学資保険とは、子どもの教育にかかる費用を蓄えるための保険です。高校や大学に入学するタイミングで一時金を受け取れるような仕組みになっており、まとまった学費が必要となる時期に備えられます。

また、保護者に万が一のことがあった場合の備えとしての機能もあります。具体的には、親(契約者)が死亡したり高度障害状態になったりしたときに、保険料の払込が免除されます。その場合でも、もともと予定している時期に教育資金や満期保険金を受け取ることができます。

8-2.生命保険

生命保険(死亡保険)とは、被保険者が死亡または高度障害状態になったときに保険金が支払われる保険です。残された家族の生活を支えるための保険といえます。生命保険に加入していれば、親が死亡した場合に保険金を受け取れるため、家族のその後の生活に必要な費用を確保できます。 ライフステージ で考えると、育児期には高額な死亡保障が必要となります。妊娠期間中の早い時期から生命保険について検討しておくとよいでしょう。

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9.各種保険の新規加入・見直しの相談なら「くらべる保険なび」

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保険にはさまざまな種類があり、状況に合わせて選ぶことが大切です。プロの目線からの適切なアドバイスを受けられますので、ぜひ相談してみてください。

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10.まとめ

出産においては、正常分娩の場合は公的医療保険を利用できません。ただし、出産育児一時金などにより、経済的な負担は抑えることができます。とはいえ、入院に際して個室を利用したり設備にこだわったりすれば高額な自己負担が必要となる可能性もあります。そのような状況に備えるには、民間の医療保険にも加入しておくと安心です。

くらべる保険なびの保険相談は、オンライン、訪問、来店から選択でき、全国対応しています。最短1分で予約できるため、出産を控えている人や計画をしている人は、ぜひ無料相談を検討してみるとよいでしょう。

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執筆くらべる保険なび編集部

株式会社LHL(日本生命グループ)にて、「くらべる保険なび」の保険情報コンテンツの企画・編集・制作を担当しています。保険の専門知識を持つメンバーやFP資格を有するメンバーが情報収集や取材を行い、保険に関する基礎知識をわかりやすくお伝えします。

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