病気やケガをしたとき、健康保険(公的医療保険)があることで医療費の負担は軽減されます。日本では、国民の誰もが健康保険に加入していて利用することができます。しかし、 実は病院で健康保険がきかない場合もある のです。
この記事では、案外多い「保険証が使えないケース」を紹介していきます。あらかじめ知っておくと、いざというときにあわてずにすみますので、ぜひ参考にしてください。
1.ここまで知っておきたい!健康保険のキホン
最初に、健康保険(公的医療保険)とは何か、医療費をどこまでカバーしてくれるのかを見ていきましょう。
※75歳以上の国民が加入する「後期高齢者医療制度」も健康保険のひとつですが、この記事では詳述しません。
1-1.健康保険制度のあらまし
現役世代が加入する健康保険(公的医療保険)は、大まかに2つに分けることができます。一つは、 被用者保険(職域保険) 。企業にお勤めの方のための 健保組合 や 協会けんぽ 、公務員の方が加入する 共済組合 が該当します。
もう一つは、自営業や非正規雇用の方などのための 国民健康保険(地域保険) 。地方自治体によるもののほか、同業者による 国保組合 がこれに当たります。
いずれの保険も、病気やケガの際、加入者の医療費の負担を軽くしてくれるものです。医療機関の窓口などでの自己負担額は、かかった医療費の3割(未就学児と70歳以上は2割)となっています。
1-2.まさかのための「高額療養費制度」
また、医療費が高額になってしまった際にも、健康保険がサポートしてくれます。たとえば 年収が約370万円までの加入者の場合は、月々の自己負担額上限は57,600円 。以後も年収に応じて上限が決まっており、これを上回った分の医療費については健康保険でまかなわれます。一般的な会社員であれば約8万円強が上限となります。
ただし、制度の利用には申請が必要で、給付まで時間がかかる場合もあります。一旦立て替え払いをしなければならないケースもあります。また、対象となるのは、健康保険が適用される範囲の医療費になります。
詳しくは「 一覧表で早わかり!高額療養費制度の自己負担限度額と申請方法 」の記事をご覧ください。
1-3.休業時の収入をサポートする「傷病手当金」
社会保険には、病気やケガが原因で仕事を休まなければならなくなったとき、給与を補てんしてくれる「傷病手当金」という制度があります。 給与の3分の2金額を、支給開始日から通算で1年6ヵ月の間、受け取ることができる というものです。
給付を受けるには、
- 療養のための休業であること
- 仕事につけない状態であること
- 連続する3日を含む、4日以上休んでいること
- 休業期間に給与が支払われていないこと
の4つの条件を満たす必要があります。
支給される金額については、以下の記事に掲載しています。なお、 国民健康保険には、この制度はありません。
詳しくは「 傷病手当金の金額がすぐわかる「早見表」& 減額されるケース 」の記事をご覧ください。
2.注意!健康保険適用外の診療
それでは、いよいよ健康保険が使えないケースをみていきましょう。基本的に健康保険が適用されるのは、病気やケガの治療に必要な診療に限られています。それ以外の、保険が適用されない・注意が必要な診療について紹介します。
2-1.病気とみなされないもの
ひとつは、病気とみなされないものに対する診療です。 生活に支障のないレベルのニキビやアザ、体臭などの治療、美容のための整形手術、近視のレーシック手術など が該当します。いずれの場合も、病気が疑われるケースについては、健康保険が適用されることがあります。
また、 正常な妊娠・出産、経済的な理由による人工妊娠中絶 も、健康保険は適用されません。ただし、異常分娩や母体保護法に基づく人工妊娠中絶については、この限りではありません。
2-2.治療のためではないもの
治療にあたらないものについても、健康保険は適用されません。 健康診断や人間ドック、予防接種など、病気を防ぐために行うもの が該当します。検査の結果、治療が必要と認められた際の医療費、破傷風やはしか、百日咳、狂犬病の感染のおそれがある場合の予防接種については、保険が適用されます。
2-3.先進医療に該当するもの
厚生労働大臣が指定する先進医療を受ける際も、健康保険は使えず、100%自己負担となります。難病などに関する、比較的新しい治療・手術が対象となっており、2024年11月現在で、その数は75に上ります。
一方で、 先進医療 を受ける際にかかる、先進医療費以外の診察・検査・投薬・入院料などについては、一般の診療と同じように健康保険が適用されます。高額療養費制度の対象にもなります。
3.こんな場合も!健保が効かないケース
健康保険が適用されないケースは、他にもあります。ここでは、2つの例を紹介します。
3-1.入院にかかる諸費用
入院費そのものは健康保険が適用されます。食事に関しても、「入院時食事療養費」の給付が受けられるため、一定の自己負担額で済むようになっています。一方で、 入院に必要な日用品費などに関しては自己負担 となります。
そして、大きな負担となるのが
差額ベッド代
(差額室料)。1部屋4床以下で、一定の条件を満たした病室に、自ら希望して入る場合に発生する費用です。
4人部屋だと1日平均2,724円
(※)
、個室であれば平均6,714円
(※)
を全額負担
しなければなりません。
(※)厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第591回)/主な選定療養に係る報告状況」(2024年)より
3-2.業務や通勤中のケガの治療
企業にお勤めの方で、業務中もしくは通勤中に起こったケガなどの治療については、 労働者災害補償保険(労災)が適用 されます。その際は、勤務先に報告のうえ、必ず労働災害であることを医療機関に伝えて診療を受けてください。
このとき、健康保険証の提示は不要です。 労災適用対象だったにもかかわらず、保険証を提示して診療を受けた場合、取り消し申請など煩わしい手続きが発生 してしまいます。
4.まとめ:賢く使おう!健康保険と民間医療保険
ここまで、健康保険制度の概要と、少なくない「保険証が使えないケース」について見てきました。すべての国民が、最低限必要な医療を全国どこでも受けられる健康保険。先進医療にかかる費用や差額ベッド代など、カバーしきれない部分があることもわかりました。
そして、これらを補うのが民間の医療保険。突然の出費に慌てたくないという方は、加入しておいたほうが良さそうです。すでに加入しているという方も、どんな給付が必要かを見直してみてはいかがでしょうか。
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