生命保険に関連して必要保障額というコトバを聞いたことはありませんか??
文字通り、死亡に対していくらの保障が必要かという金額なのですが、それがいくらなのかわからず困っているのではありませんか?
はっきり言うと、必要保障額の計算には年金などの専門的な知識が必要で、誰もが簡単に計算できるものではありません。
それではどうしたらいいのでしょうか?
ご安心ください。この記事で簡易的な計算方法を紹介します。説明にそって計算していけば、必要保障額の概算がわかりますので、生命保険に加入する際の参考にしてください。また合わせて、必要保障額の考え方も理解できるようになっています。
※独身者や夫婦のみという家族構成の方で、おおまかな必要保障額の目安だけ知りたい方は、「 4. 家族構成別、必要保障額の目安 」をご覧ください。
1. 必要保障額とは
必要保障額とは、ある人が死亡した場合に、その遺族が生活していくにあたって足りなくなる(=必要になる)お金のことで、 万一に備える生命保険(死亡保険)の保険金の目安となる金額です。
具体的には、死亡した後における「遺族の支出と収入の差額」が必要保障額ということになります。
また別の見方をすると、その人が死亡することによって失われる収入を補うためのお金ということもできます。
そのため、必要保障額は一家の大黒柱として家計を支えている人は金額が大きくなり、収入がない人や養う家族がいない人は金額が少ないかほぼ0円ということになります。
<必要保障額の2つの側面>
- 生命保険の保険金額の目安
- 万一の場合に遺族が生活していけるように残すべきお金
2. 必要保障額の一般的な2つの計算方法
必要保障額を算出するためによく利用されている計算方法が主に2種類あります。
2-1. 詳細な計算方法
万一の場合に、遺族が生活していくための支出と収入の差額をもとめる計算方法です。支出と収入の項目をできるだけ網羅して、かつ正確な金額を出していくとかなり精度の高い計算ができます。
収支の差から必要保障額を求める計算式
[支出] –[収入]=[必要保障額]
- 支出: 死後の整理資金、遺族の生活費(住居費)、こどもの教育資金 など
- 収入: 遺族年金(老齢年金)、死亡退職金、遺族の預貯金、遺族の収入、相続財産など
このように、その後の遺族の生活における収支を計算すれば必要保障額を求めることができます。ただし、遺族年金がいくらになるのかなどは社会保険の専門的な知識がないと計算が難しくなります。
2-2. 簡易的な計算方法
生命保険業界では、現在の生活資金をもとに遺族のその後の生活資金を算出する方法がよく使われています。その計算方法では、こども(末子)が大学を卒業するまでと卒業した(独立した)後の2つの期間に分けて生活資金の概算を合計します。
ここでは、 [夫+妻+こども(就学中)] という家族を例に、大黒柱の夫が死亡した場合のその後の遺族の生活費を計算してみましょう。
簡易的な生活資金から必要保障額を求める計算式
[1]+[2]=[必要保障額]
- 1: 末子の大学卒業までの妻子の生活資金(現在の7割)
- 2: 末子の大学卒業後の妻の生活資金(現在の5割)
★上記(1)(2)の計算方法
(1) [現在の1ヵ月生活費]×7割×12ヵ月×(22歳-末子の年齢)
(2) [現在の1ヵ月生活費]×5割×12ヵ月×[{86歳※-(妻の年齢+(22歳-末子の年齢)}]
※女性の平均寿命(本来は妻の現年齢の平均余命を使いますが、ここでは平均寿命で代用します)
たとえば、夫(30歳)、妻(28歳)、こども(3歳)の家族で現在の月間の生活費が30万円であったとして、夫が死亡した場合の必要保障額をこの方法で計算してみると、 1億1,808万円 となります。
1億円を超える大金になってしまいました💦
なぜならこの計算だと、 遺族年金などの死亡によって入ってくるお金や死亡時点の貯蓄、将来の妻の老齢年金などが考慮されていないから です。実際には、これらのお金も考慮して差し引きが必要です(生命保険文化センターでも、この計算後にいくつかの収入および支出項目を足し引きするように説明しています)。
また、専業主婦がシングルマザーになった後も、一生働かずに生活することになっているのも必要保障額を押し上げている要因です。もし妻がパート・アルバイトなどで月10万円の収入を20年間得たとすると、それだけで 2,400万円必要保障額が少なくてすみます。
このように、この簡易的な生活資金の計算方法から必要保障額をだそうとすると、ざっくりすぎますし、これに細かい収入・支出を差引すると、結局複雑な計算になってしまいます。
3. 自分で必要保障額を算出する場合のおすすめの計算方法
2-2の簡易的な生活資金の計算方法では、どうしても必要保障額が高額になってしまうので、ここでは最低限の補正を加えて、 簡単に、かつ、より実態に近づいた必要保障額を計算するおすすめの方法をご紹介 します。なお、この計算は就学中のこどもがいる家庭を想定していますので、一人暮らしやこどものいない夫婦の場合は、 4章 の目安をご参照ください。
3-1. 計算方法の補正
2-2の計算に以下のような補正を加えます。
[1]+[2]-[3]±[4]=[必要保障額]
- 1: 末子の大学卒業までの妻子の生活資金(現在の7割)
- 2: 末子の大学卒業後、妻65歳まで (a) の生活資金(現在の5割)
- 3: 妻の収入 (b)
- 4: その他 (c) ※特有の事情がある場合
※上記(a)、(b)、(c)の補足
(a) 計算年数の補正
2-2では、配偶者が人生を終えるまでの生活費を計算していました。もちろん、余裕があればそれだけのお金を残してあげるのが理想的です。しかし、そうなると高額な生命保険が必要になり、保険料の負担が大きくなってしまいます。
ここでは、 配偶者が老齢年金を受けられる65歳までとして計算 することとします。今は年金だけで生活するのは難しいと言われています。しかし、そうはいっても一定の金額が入ってくるわけですし、こどもも独立した後なので割り切って考えてよいでしょう。
(b) 妻の収入を補正
現在は女性も働くことが多くなっています。また専業主婦であったとしても、もし夫が亡くなったとしたら、子育てをしながらで大変とはいえ、通常は、こどもが手のかからない年齢になれば何らか仕事をするのではないでしょうか?
それによる収入を金額的にも就労年数的にも無理のない範囲で考慮するようにしましょう。
(月収
○
万円 × 12ヵ月 ×
○
年)
(c) その他の補正
たとえば、賃貸住宅に住んでいる場合で、夫が死亡した後に妻の実家で生活できるということになれば家賃分を節約できます。そのほか多くの貯蓄がある場合はその額を考慮できます。このように比較的大きな金額が入ってきたり節約できたりする、あるいは逆に出て行くような特有の事情があれば、その金額を自分で補正します。
3-2. 補正を加えた後の必要保障額の計算例
それでは、この補正を加えた計算方法で、2-2.の家族の場合の必要保障額を計算し直してみましょう。
夫(30歳)、妻(28歳)、こども(3歳)の家族で現在の月間の生活費が30万円でとします。
-
こどもが大学を卒業するまで
生活費を現在の7割として計算します。
30万円×7割×12ヵ月×(22歳-3歳)=4,788万円 -
こどもが大学卒業後の妻の生活資金
生活費を現在の5割として、 妻が65歳になるまで の生活資金を計算します。
30万円×5割×12ヵ月×[65歳-{28歳+(22歳-3歳)}]=3,240万円 -
妻が働いた場合の収入を補正
こどもが小学校に入って大学を卒業するまでの期間、妻が働いたとします。月15万円の収入を15年間得たとすると、収入の合計は以下のように計算できます。
15万円×12ヵ月×15年=2,700万円
ここでは、「4:特有の事情」は考えないことにして、1~3を足し引きした結果が必要保障額となります。
4,788万円+3,240万円-2,700万円= 5,324万円
1億円超であった金額から半分くらいになりました。この必要保障額をもとに保険に入るにして、現実的な金額になりました。
4. 家族構成別、必要保障額の目安
それでは、家族構成による必要保障額の大まかな目安、考え方をみてみましょう。もちろん、原則は各家庭や個人の事情により一人ずつ違ってくるものであることをお忘れなく。
4-1. 夫婦+こども
前章の計算によりだいたいの目安をお求めください。
4-2. 夫婦のみ(就学中のこども無し)
扶養するこどもがいない夫婦で共働きの場合であれば、お互いに死亡した後の生活費についてはそれほど気にしなくてもよくなります。また専業主婦(主夫)であっても、いざとなれば働けるのであれば同様です。死後の整理資金や生活を立て直すための一定期間の補助となるお金などで、 1,000万円程度 の保障があればよいでしょう。
ただし、中高年以降の夫婦で、配偶者があらためて働きに出てまとまった収入を得ることが難しそうな場合は、保障額を増やして 2,000万円程度 と考えるとよいでしょう。
4-3. 独身
独身で、扶養家族がいなければ特に保障は必要ありません。自分の死後の整理資金として葬式代・お墓代などがまかなえる 300~500万円程度 の保障があれば十分です。
↓ 家族構成別の死亡保障額の目安など、
おすすめの保険プランはこちら!
>
家族構成から保険を探す
5. 必要保障額を大きく変動させてしまう要因に注意
ここまで必要保障額の簡易的な計算方法やおおまかな目安を紹介してきました。自分で必要保障額を知りたい場合は、この方法でよいでしょう。
その上で、 より厳密に計算したい場合は、ファイナンシャル・プランナーや保険のプランナー(ライフプランができる保険営業員)などの専門家に相談 することをおすすめします。ただし、その場合でも注意しなければならないことがあります。
それは 必要保障額についての考え方や算出条件によっては、たとえ専門家が計算したとしても人によって結果が変わってくる ということです。このことは、生命保険会社などがWEBサイトで提供している必要保障額のシミュレーションをしてみると、各社で額が違ってくるということからもおわかりいただけると思います。
繰り返しになる部分もありますが、ここで必要保障額に大きな差が出る4つの要因を紹介しますので、よく覚えておいてください。
5-1.必要保障額を計算する期間
必要保障額を計算する期間をいつまでにするかで額が全然違ってきます。 死亡後、数年間だけでよいのか、こどもが独立するまでなのか、配偶者の生活を生涯支えるのかなど、当然その期間が長くなるほど必要保障額は大きくなります。
5-2.残された家族の収入
残された遺族が、その後働いて収入を得るかどうかによって必要保障額は全然変わってきます。
5-3.家賃や住宅ローンなどの住居関連費
生活費の中で家賃は大きなウェイトを占めます。賃貸住宅に住んでいる場合、たとえば 夫の死亡後に、その家に引き続き住むのか? より家賃が低いところに引っ越したり妻の実家に帰ったりするのかによって、その後の家賃の額は全然変わってきます。
また、持ち家で住宅ローンを抱えている場合で、もし団体信用生命により住宅ローンが返済されたとしたら、その後の住居費は固定資産税や管理費・修繕費だけですむことになります。
5-4.こどもの教育費
たとえば、 中学校以降はこどもを私立に進学させたいと考えていたとして、一家の大黒柱を失った後もその予定を変えないのか?それとも公立中心の進学に変えるのかによって教育費が全然変わってきます。
6. まとめ:必要保障額を正しく理解した上で、できれば専門家に相談を!
必要保障額は、生命保険の保険金額を設定する上でとても大切な金額です。適切な保険金額を設定するために正確な計算をしたいところです。ただし、精密な計算は専門家でなければ難しいのが現状ですし、専門家が計算したとしても、計算の考え方や算出条件が少し違うだけで最終的な必要保障額は大きく違ってきます。
結局のところ、必要保障額はあくまでも目安でしかなく、 一番大切なのは、必要保障額の考え方を正しく理解していること であり、どんな計算方法でどんな条件でその金額が計算されたのかを意識して参考にすることです。
また必要保障額は、こどもが進学したり、家族がそれぞれ年を取っていったりすることによって、年々金額が小さくなっていくものです。さらには人生設計が変わると必要保障額もかわってきます。 何年か毎に計算しなおして、その結果により保険を見直していくことも大切 です。定期的に相談していけるようなファイナンシャル・プランナーやライフプランナーと上手に付き合っていくことをおすすめします。
↓ 当サイト「くらべる保険なび」でも必要保障額を相談することができます!
>
保険相談サービスの詳細を見る
(くらべる保険なび)