私たちが加入している 生命保険には配当金がある ことをご存じでしょうか?
配当金と言うと株の取引で企業が株主に支払うものというイメージがあると思いますが、実は保険にも、私たちが支払った保険料を運用して余った分を還元してもらえる仕組みがあります。
この記事では、生命保険の配当金とはどのようなものか、仕組みや種類について解説していきます。低金利下の現在では配当に期待を持つことはなかなか難しいですが、保険に関する基礎知識の1つとして、この機会に是非「生命保険の配当金」について押さえておきましょう。
1.生命保険 配当金の基礎知識
まず生命保険の配当金の基礎的な知識を紹介します。生命保険における配当金とはいったいどのようなものかをしっかり理解しましょう。
1-1.有配当の保険と無配当の保険
生命保険は大きく分けると、配当金の分配がある「有配当の保険」と配当金の分配のない「無配当の保険」に分類されます。配当金の分配のないタイプに加入している場合、契約終了まで配当金を受け取ることはありません。
1-2.配当金の仕組み
生命保険の保険料は 「予定利率(運用利回り)」 、 「予定死亡率(死亡者数の予定)」 、 「予定事業比率(事業費の予定)」 という3つの予定率を基に算出されますが、実際には予定した通りの運用利回り、死亡者数、事業費になるとは限りません。特に生命保険は契約が長期間であることから、予定率が保守的に見積もられていることが多く、そういった傾向が強いと言えます。
このような予定と実際の数字の違いによる差額は毎年度の決算時に計算されますが、差益がある場合はそれを「剰余金」と呼びます。 「剰余金」は一定額を超えると契約者に還元されます。これが「配当金」です。
1-3.配当金の4つの受取方法
一般的に配当金の受取方法には下記の4種類があります。契約時にどれを選択するか決めますが、保険によっては最初から受取方法が指定されている場合もあります。
1-3-1.積立配当
保険会社が配当金を預かり、契約者の口座に積み立てておく方式です。特長としては、 保険会社に積み立てることで配当金に一定の利息が付く ことがあげられます。個人の契約ではこの方式がもっとも多く用いられ、近年では積立途中であっても契約者が自由に一定の金額を引き出せるような商品も増えてきています。
1-3-2.保険金買い増し
配当金を一時払いの保険料にあてることで、保険を買い増す方式です。特長としては、 保険金が増額となり保障が手厚くなる ことがあげられます。終身保険や養老保険など貯蓄性の高い保険の買い増しなどに用いられることが多いです。
1-3-3.相殺配当
配当金をこれから払い込む保険料と相殺する方式です。 保険料から配当金分の金額を差し引くことで、保険料負担が減る という特長があります。
1-3-4.現金配当
配当金を契約者に現金で支払う方式です。主に団体保険で用いられる方式で、個人保険ではあまり用いられません。
1-4.配当金の支払い時期
配当金は支払いのタイミングによって主に下記表の3タイプがあります。その他には長期継続契約に対して特別配当金が支払われるタイプもあります。
なお毎年配当型の場合、通常は契約後3年目から支払われますので最初は配当金がないことにご注意ください。
■配当金の支払タイプ
毎年配当型 | 毎年配当金が支払われる |
3年ごと配当型 | 3年ごとに配当金が支払われる |
5年ごと配当型 | 5年ごとに配当金が支払われる |
1-5. 2種類の配当タイプ
配当金は、保険料を決める際の予定(計画数値)と実際との差である、 「利差益」 、 「死差益」 、 「費差益」 の3つの差益によって成り立っています。
<3つの差益>
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「利差益」
予定利率よりも実績利回りが高かった場合に生じる差益 -
「死差益」
予定死亡率よりも実際の死亡率が低かった場合に生じる差益 -
「費差益」
予定事業費よりも実際にかかった事業費が少なかった場合に生じる差益
そして配当タイプには、3つの差益全てを配当金にあてるタイプと「利差益」のみを配当金にあてるタイプの2種類があります。
■配当タイプ
3利源配当タイプ | 「利差益」「死差益」「費差益」の3つの差益を集計し、配当金として分配するタイプで、「毎年分配金型」が主流です。 |
利差配当タイプ | 「利差益」のみを一定年数ごとに通算し、配当金として分配するタイプで「5年ごと利差配当型」が主流です。 |
2.配当金に税金がかかる場合、かからない場合
生命保険の配当金は原則として課税対象にはなりません。しかしここまでみてきた通り、配当金にはさまざまなタイプがあり、 条件によっては課税の対象となる こともあります。ここでは配当金を受け取る時期で分けて考えていきます。
2-1.契約期間中に配当金を受け取った場合
保険期間中に配当金を受け取った場合、その配当金に対しては所得税や住民税、贈与税は課税されません。
ただし、 生命保険料控除においては、支払保険料から配当金額を控除した額で申請 をしなくてはなりません。つまり、課税されないかわりに生命保険料控除の対象金額が少なくなります。
2-2.保険金の支払開始の日以後に配当金を受け取った場合
保険金の支払開始の日以後に配当金を受け取った場合、 年金受取のタイプでは「雑所得」、一括受取のタイプでは「一時所得」として所得税が課税されます。
2-3.保険金と共に配当金を受け取った場合
保険金と共に配当金を受け取った場合、配当金額を保険金の額に含めて課税対象 となります。
生命保険は、契約者と保険金受取人の関係や保険金の支払事由などにより、相続税や所得税、贈与税の対象になりますので、受け取った生命保険金と配当金の合計額について、どのような課税になるか判断が必要です。
3.生命保険の配当金に関する注意点
お金が戻ってくるというメリットがある有配当保険ですが、注意しなくてはならない点もあります。うっかり損をしないためにここで確認しておきましょう。
3-1.保険加入前の注意点
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有配当の保険は保険料が割高
有配当の保険は無配当の保険に比べて保険料が割高 です。低金利下では、配当金に期待するのと、保険料の安価な無配当の保険を選択するのとどちらがお得かよく考えたほうがよいでしょう。
3-2.保険加入後の注意点
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有配当でも配当金がゼロになる場合がある
有配当の保険だからといって必ず配当金が出るけではありません。運用が低調で剰余金が得られない場合には配当金がゼロになることもあるからです。
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積立配当のある保険を転換すると、それまで積み立てた配当金がなくなる
積立配当のある保険を転換すると、それまで積み立てた配当金は新しい保険の保険料に充当され、受け取れなくなってしまいます。 また保険の転換は予定利率次第では保険料が高くなる場合があります。
4.まとめ:配当金を狙うより、保障内容を重視して生命保険を選ぶべき
低金利下では、あまり多くの配当金には期待はできません。 また、生命保険のそもそもの役割は「将来への備え」であり、あくまで プラスαの要素である配当の有無に気をとられることよりも、まずは保障の内容についてしっかり確認することが重要 です。
ただ、今後金利が上昇していくと配当への期待が高まるでしょう。いざという時に「知らなかった」なんてことにならないためにも、今回の記事で紹介した保険の配当金の仕組みや注意点は、保険に関する基礎知識として覚えておきましょう。