生命保険の受取金には税金がかかる場合があり、その税金も相続税や所得税、贈与税と多岐にわたります。ここでは、その税金のかかり方をわかりやすく説明するとともに、一時所得として所得税の対象となる場合における税額の計算方法を例をあげて説明しています。
この記事を読んでいただくと、生命保険から受け取ったお金が一時所得になるかどうか、そしてその場合の税額はいくらくらいになるか、自分で判断・計算できるようになれますので、ぜひお役立てください。
1. 税金のかかり方が決まる要素は、受け取るお金の種類と契約形態
生命保険会社から受け取る保険金など(受取金)には、税金がかかる場合とかからない場合があり、さらにかかる場合の税金の種類も違っています。それらを 判断する要素は、受け取るお金の種類と契約形態 です。
1-1. 受け取るお金の種類
受け取るお金の種類としては、「保険金」と「給付金」があります。
■保険金と給付金
保険金 | 死亡保険金、満期保険金など |
給付金 | 入院給付金、手術給付金、疾病入院給付金、災害入院給付金、障害給付金、生存給付金、お祝い金など |
1-2. 保険の契約形態
保険を契約する時には、『誰がお金を支払い(契約者)、誰に保険をかけ(被保険者)、誰が受け取るのか(受取人)』ということを取り決めますが、これを契約形態と言います。
受取金への税金のかかり方は、この契約形態によって異なります。今後の説明の事前知識として以下の保険契約関係者について理解しておきましょう。
契約者 | 保険料を支払う人。契約の保有者ということになります。 |
被保険者 | 保険を掛けられる人です。自分で自分に保険を掛ける場合もありますし、自分以外の家族に保険を掛ける、というケースもあります。例えば、妻や子ども(が被保険者)の保険を夫が契約するというような場合です。 |
受取人 | 保険金や給付金の受取人のことです。契約者と、受取人の関係によって、かかる税金が異なります。 |
2. 保険金にかかる税金
ここでは「保険金」を受け取ったときの税金について説明します。以下の例も参考にしながら整理していきましょう。
2-1. 保険金が相続税の対象になるケース
お金(保険料)を支払った人(契約者)が、自分に保険をかけて自分が死亡し、遺族が死亡保険金を受け取る場合は「相続税」の対象になります。
【例 1 】相続税の対象になるケース
夫が自分の死亡保険に加入して、夫が死亡後に、妻が保険金を受け取る
2-2. 保険金が所得税の対象(一時所得として)になるケース
お金(保険料)を支払った人(契約者)本人が、保険金を受け取る場合は「一時所得」となり「所得税」の対象になります。
【例 2 】所得税(一時所得として)がかかるケース
夫が貯蓄タイプの保険に加入して、夫本人が満期保険金や解約返戻金などを受け取る
2-3. 保険金に贈与税がかかるケース
生命保険において、お金(保険料)を払った人(契約者)が、別の人に保険をかけ、さらにまた別の人が死亡保険金を受け取る場合は「贈与」となり「贈与税」の対象となります。
【例 3 】保険金に贈与税がかかるケース
夫が契約者になり、妻に保険をかけ、死亡保険金や満期保険金の受取人が子ども
この場合、お金を支払った人が生存していながら別の人にお金をあげることになるので「贈与」となります。贈与税は高額となるため、契約者と被保険者が異なる契約の場合には、死亡保険金受取人は契約者と同人とするのが一般的です。
とくに途中で契約者を変更したときなどには、保険金受取人と新しい契約者の関係性についても注意する必要があります。
また、満期保険金についても、お金を払った人(契約者)とは別の人が受け取る場合は贈与となります。
2-4. 死亡保険金と満期保険金への税金のかかり方のまとめ
上記の例を踏まえて一覧表にすると、以下のようになります。
■死亡保険金と満期保険金の課税関係
保険料の負担者 | 被保険者 | 保険金受取人 | 税金の種類 | |
死亡保険金 | 夫 | 夫 | 妻または子 | 相続税 |
夫 | 妻 | 夫 |
所得税
(一時所得) | |
夫 | 妻 | 子 | 贈与税 | |
満期保険金 | 夫 | – | 夫 |
所得税
(一時所得) |
夫 | – | 妻または子 | 贈与税 |
3. 給付金にかかる税金
続いて給付金を受け取った時の税金について説明します。
給付金のうち、「入院給付金」や「手術給付金」、「疾病入院給付金」「災害入院給付金」「障害給付金」など 治療にかかった費用を補てんするための給付金には、税金はかかりません。
一方、「生存給付金」や「お祝い金」などのように、 治療や身体の傷病にかかわらない給付金は課税の対象となります。
■給付金等の課税関係
給付金の種類 |
契約者
(保険料の負担者) | 被保険者 | 保険金受取人 | 税金の種類 |
入院給付金等治療にかかる費用を補う給付金 | 被保険者が受け取る給付金に税金はかかりません | 非課税 | ||
生存給付金・お祝い金 | 夫 | – | 夫 | 所得税(一時所得) |
夫 | – | 妻または子 | 贈与税 |
「生存給付金」や「お祝い金」は、お金を払った人(契約者)本人が受け取れば一時所得として所得税の課税対象となり、違う人が受け取れば贈与税が課税されます。
4. 一時所得となった場合の税金はどれぐらいかかるの?
保険金や給付金が一時所得となり課税対象となる場合の税金のかかり方について詳しくみていきましょう。
4-1. 一時所得とは
「一時所得」には生命保険の受取金のほかにも次のようなものがあります。
- 懸賞や福引きの賞金品
- 競馬や競輪の払戻金
- 法人から贈与された金品
- 遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
- 生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金等
一時所得とは、労務や役務の対価としての性質や、資産の譲渡による対価としての性質を持たないもの、と言えます。
4-2. 一時所得の計算方法
所得税の課税の対象となる一時所得の金額および課税額は、次の算式で算出されます。
<一時所得の金額>
総収入額 - 収入を得るために支出した金額 - 特別控除額(最高 50 万円) = 一時所得の金額
<一時所得に対する税額>
上記の一時所得の金額 × 1/2 × その年の所得税率 = 所得税額
すなわち、 満期保険金などの受取金から、経費にあたる支払った保険料の合計金額を差し引いた金額が 50 万円を超えない場合には税金はかかりません。
超えた場合は、超えた額の 1/2 の金額に対して所得税がかかります(総合課税として)。
例えば支払った保険料の合計が
100
万円で、受け取った保険金が
150
万円の場合、差額が
50
万円以内なので税金はかからない
(※)
、ということになります。
(※)
この年に他の一時所得がない場合。以下の事例も同様
また例えば、支払った保険料の合計が 100 万円で受け取った保険金が 200 万円の時は、以下の計算式で一時所得と所得税を計算します。
200 万円- 100 万円- 50 万円(控除額)= 50 万円(一時所得)
50 万円(一時所得) ×1/2× 所得税率(税率 20 %とすると)= 5 万円(所得税額)
4-3. 一時所得は確定申告が必要
一時所得は、確定申告時に申告します。
給与所得者の場合でも確定申告が必要 となります。ただし、「給与所得および退職所得以外の所得金額」が満期保険金の受領などの一時所得のみの場合については、 特別控除後の金額 ( 一時所得の金額 ) を 1/2 にした金額が 20 万円以下の場合には、確定申告は不要です。
5. まとめ:生命保険の受取金と一時所得について
生命保険の受取金と一時所得について以下にポイントをまとめますので参考にしてください。
生命保険の受取金が一時所得となるケースは以下の通りです。
- 契約者と被保険者が別の人で、契約者と受取人が同一の場合の死亡保険金
- 契約者と受取人が同一の満期保険金
- 契約者と受取人が同一の生存給付金やお祝い金
おさらいすると、一時所得にかかる税金は、受取金から経費分となる支払った保険料の合計金額を差し引いた金額から、さらに控除額の 50 万円を引き、その 1/2 の金額に対して総合課税されます。つまり一時所得の税金は、他の種類の税金に比べて少額となります。
最終的に、一時所得は一年間の一時所得の合計が 50 万円を超えない限り、税金はかかりません。