タトゥーが入っている場合に生命保険に加入できるのか気になっている人もいるのではないでしょうか。この記事では、生命保険加入におけるタトゥーの影響について説明します。
ただし、タトゥーが入っている人が実際に生命保険に加入できるかどうかは、どのようなタトゥーであるかや保険会社によって違ってきますので、保険会社や代理店に個別に相談することをおすすめします。
1.そもそもタトゥーとは?
タトゥーとは、針で皮膚に墨やインクを入れて文字や絵を描いたものです。伝統的な和彫りの刺青や最近流行りのファッションタトゥーなどがあります。厳密にはそれぞれ技法が異なるものの、一般的にはどちらも同様なものとして捉えられています。それぞれを分けて捉えている人もいますが、明確に定義されているわけではありません。
2.タトゥーがあると生命保険に入れない?
タトゥーがある場合、生命保険への加入ができないケースがあります。なぜなら、通常より高い健康リスクを抱えていると判断されることがあるからです。
生命保険は加入者同士の相互扶助で成り立っており、特別に高いリスクを抱える人が加入すれば生命保険の公平性を損ねる要因になります。リスクが高い人は保険金が支払われる可能性が相対的に高くなるため、他のリスクが低い人と同じ保険料では不公平になります。このような考え方から、一般的にはタトゥーが入っている人は生命保険の診査に通りにくいといわれています。
なお、タトゥーがある人は健康リスクが高いといわれる理由については、以下でくわしく説明します。
3.タトゥーがあると生命保険に入りにくい理由
ここでは、タトゥーがある人が生命保険に入れない可能性がある理由について具体的に説明します。
3-1.反社会勢力の関係者かもしれないと慎重になるため
歴史的にも、反社会的勢力として活動している人に入れ墨をしている人が多い傾向にありす。そのイメージは一般にも定着しているため、タトゥーが入っていると、反社会的勢力との関係性などをより考慮する必要があります。
生命保険会社は、業界として反社会的勢力との関係を遮断することを徹底しており、 生命保険協会のWEBサイト にも、その旨が宣言されています。
もちろん生命保険の診査において、 タトゥーがあるという理由だけで反社会的勢力だと疑われたり、加入を断わられたりするわけではありません 。ただし、反社会的勢力である可能性も考慮し、慎重に診査が行われることになる可能性はあります。
3-2.健康上のリスクがあるため
タトゥーを入れている人は、入れていない人よりも健康上のリスクが高い可能性があるとみなされるのも、生命保険に入りにくい要因の1つです。たとえば、タトゥーに使用されている着色料によりアレルギーが発症する可能性があります。また、不衛生な環境で施術を受けた場合、病気に感染する恐れもあります。タトゥーを入れる際の感染リスクについては以下で説明しますので、あわせて参考にしてください。
4.タトゥーを入れる際に感染するリスクのある病気
タトゥーを入れる際は針やグラインダーを使用して肌に小さな傷をつけ、色をつけていきます。傷をつける際に少量の血液がつくため、針やグラインダーの使い回しがあると病気に感染するリスクがあります。たとえ機器を消毒していても、完全に行われていないと感染症になる可能性はゼロではありません。
血液の接触を通して感染する大きな病気としては、 B型肝炎 、 C型肝炎 、 ヒト免疫不全ウイルス(HIV) などがあります。それぞれの病気について以下で解説します。
4-1.B型肝炎
B型肝炎は、日本で約130~150万人が感染していると推定されている病気です。B型肝炎ウイルスの感染により急性肝炎を起こした場合、まれに劇症肝炎が発症するケースもあります。また、感染により慢性肝炎になる人もいるため、注意が必要です。肝硬変や肝臓癌に至る場合もあります。
4-2.C型肝炎
C型肝炎は、C型肝炎ウイルスによって感染する病気です。感染した人のうち約70%が持続感染者になります。
C型肝炎に感染しても、自覚できる症状がすぐに出るわけではありません。そのため、感染に気づくのが遅れるケースも多いです。結果として慢性肝炎になり、肝硬変や肝臓癌などに至る可能性があります。
4-3.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)とは、いわゆる「エイズ」を生じさせるウイルスのことです。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染すると体内でウイルスが増殖します。数年~10年でエイズを発症し、体の免疫機能が低下するため他の病気になるリスクも高まります。
5.タトゥーがあっても保険会社によっては加入できるケースもある
タトゥーがあると生命保険に加入できないことがあるものの、保険会社や状況によっては加入できる場合もあります。もちろん、タトゥーを入れており、反社会的勢力にも該当するなら生命保険への加入は困難です。しかし、反社会的勢力に属しているわけでなければ、一律に加入できないというものではありません。
とくに近年、タトゥーはファッションやアートとして捉える人も増えており、タトゥーを入れているからといって必ずしも反社会的勢力であるとは限らなくなっています。よって、診査において本人の実際の状況を考慮し、生命保険への加入を認めるケースもあります。ただし、タトゥーがない場合とは異なる特別な条件がつく可能性もあるため、確認が必要です。
なお診査に通れば、その時点で問題なく保険の契約ができる人物だと判断されたことになります。そのため、タトゥーがあると事前に伝えたうえで加入した保険であれば、その後支払い要件に合致するとタトゥーがない人と同じく保険金が支払われます。
6.知っておきたい生命保険の告知診査について
生命保険には告知診査があります。ここでは、告知診査の概要や違反が発生した場合のリスクについて解説します。
6-1.告知義務とは
生命保険に加入する際は、保険会社に対する告知義務があります。
この告知義務とは、保険を申し込む際に被保険者や契約者が自分自身の健康状態をはじめとする情報を、保険会社に正確に報告する義務のことです。保険会社に対する告知は、通常、告知書とよばれる書面をもって行います。提出した告知書をもとに診査が実施され、加入の可否が判断されます。そのため、自分自身の健康状態などを担当者に
口頭で説明するだけでは、告知として認められません
。
告知書に記載する具体的な内容は、健康状態、既往歴、職業などです。告知の内容にもれや事実相違があれば違反とみなされる可能性があるため、正確に記載する必要があります。
6-2.告知義務違反のリスク
告知書で問われたことに正確に答えず告知義務違反となった場合、さまざまなリスクがあります。たとえば、生命保険の契約が成立したとしても、後から告知義務違反が明らかになり契約が途中で解除され、支払い要件に該当しても保険金が支払われない場合があります。
また特に重大な告知義務違反があった場合は、 詐欺による契約の取り消し となり、請求しても保険金を受け取れないだけでなく、それまで支払った保険料も返還されません。
6-2-1.保険契約の解除とは
告知義務違反が発覚した場合、保険法第55条を根拠として保険会社は保険の契約を解除できます。
保険法 第55条
保険者は、保険契約者又は被保険者が、告知事項について、故意又は重大な過失により事実の告知をせず、又は不実の告知をしたときは、生命保険契約を解除することができる。
※出典:保険法55条
7.生命保険において告知義務違反を避けるポイント
ここでは、告知をする際に押さえておきたいポイントを解説します。
7-1.事実をありのまま記入する
生命保険の告知書には、事実をありのまま記載 しましょう。質問を正確に読み取り、どのような内容についても偽らずに回答する必要があります。不利になる事実を隠そうとしても、保険会社の調査により発覚する可能性があります。
ただし、質問された内容以外は記載しなくてよいため、聞かれたことに正確に伝えるだけで構いません。また、告知書は、基本的に被保険者自身が記入する必要があります。
7-2.曖昧な表現は使わず詳細に記入する
告知書では曖昧な表現を避け、可能な限り詳細に記入しましょう。わかりにくい部分があれば、記入例をよく見て参考にしてください。 記載の仕方に不安があるときは、担当者に確認すると安心 です。また、 必要な情報は、告知書に記載し始める前にまとめておく とスムーズです。
なお、過去に病気の治療をした経験がある場合は、既往歴とともに完治しているか、日常生活に支障はないかなど、現在の状態についても記入する必要があります。
8.タトゥーありの場合は対面形式での申し込みがおすすめ
保険の申し込みは、商品によっては非対面(通販やネット契約)でも可能ですが、タトゥーを入れている人は対面による申し込みがおすすめです。対面で保険の申し込みをすれば、タトゥーが入っている理由や状況について担当者へ具体的に説明できます。実際にタトゥーを見せたほうがより正確な告知にもつながるため、タトゥーを入れているならできる限り対面で丁寧に申し込み手続きをしましょう。
9.まとめ
タトゥーがある場合、生命保険に入れない可能性があります。反社会的勢力との関わりを考慮して慎重になったり、健康上のリスクについて懸念されたりするからです。ただし、保険会社や状況によっては、タトゥーが入っていても生命保険に加入できる場合があります。実際に生命保険に加入できるかどうかは保険会社の判断によるため、加入を希望する人は個別に相談する必要があります。
また保険には告知義務があり、保険会社から告知を求められた内容については正確な情報を伝えなければなりません。不利な内容を偽って伝達すれば、告知義務違反になります。保険料が支払われなかったり、契約が解除されたりすることがあるため注意が必要です。タトゥーの存在についても隠さず、ありのままの状況を伝えて診査を受けましょう。