生命保険に加入するときに、被保険者(保険をかけられる人)が健康状態について記入する書類を「告知書」と言い、このような書類等を通して保険会社に健康状態等を知らせることを告知といいます。
この告知には義務がありますので、もし告知をしなかったりうその告知をした場合には契約が解除される場合もあります。
この記事では、告知の詳しい説明だけでなく、告知はなぜ必要なのか、また、うっかり間違った告知をした場合にどう対処したらよいかなど、生命保険の告知についてくわしく解説していきます。告知についの理解を深め、正しい告知にお役立てください。
1.生命保険の告知義務とは
生命保険を契約する場合、被保険者が、 健康状態や既往歴、職業などについて告知することが義務づけられていて 、これを 告知義務 と言います。
なぜ告知が必要かというと、生命保険は多数の人が保険料を出し合うことで助け合うしくみになっているため、例えば同じ年齢、性別、同じ契約内容、同じ保険料だったときに、健康状態に差があったり職業の危険度などが違っていたりすると、公平ではなくなるため、事前に確認を行う必要があるからです。そのため 告知書には、ありのままの事実を記入する 必要があります。
告知した内容によっては、保険に加入できない場合や、一部の傷病について担保されない(保障されない)、または保険料が割り増しになる、という場合もあります。
なお、健康状態等を、保険会社や保険代理店の担当者に 口頭で伝えただけでは告知になりません ので注意してください。被保険者本人が、告知書に正しい情報を記入することで、初めて告知したことになります。
2.告知書による告知と診査
生命保険に加入する際に必要となる告知の内容は、保険の種類や設定する保険金額、契約内容などにより異なっており、告知書の提出だけでなく医師の診査を受ける場合もあります。
2-1.被保険者本人が告知書に記入するケース
医療保険・がん保険・小型の死亡保険・個人年金保険などの場合、契約手続きとともに、被保険者本人が質問事項の書かれた告知書に健康状態や職業などを記入し、保険会社に提出します。商品や保障額などによって告知内容が異なる場合もあります。
例えば、既往症の人でも加入しやすくした商品の場合の告知書では、告知項目が少なくなっています。
2-2.告知書とあわせて診査を受けるケース
死亡保障額が高額となる場合には、健康診断書を提出する方法のほか、面接士や医師による診査を行う必要があります。こうした場合でも告知書の記入はあります。このような診査が必要となる基準については、商品や年齢などにより異なり、また保険会社によっても違いがあります。
死亡保険額が高額となる場合の診査(例)
-
「健康診断書」などによる代用診査
健康診断書と共に、被保険者本人が質問事項の書かれた告知書に健康状態や職業などを記入して、保険会社に提出します。 -
生命保険面接士
(※)
または診査医(医師)による診査
生命保険面接士または医師が被保険者に面談を行い、その場で被保険者が告知書を記入します(医師が質問し、被保険者が記入したものを確認する場合もあります)。診査報状と共に、面接士または医師が保険会社に提出します。保障額などによって診査内容が異なる場合があります。
※生命保険面接士とは被保険者の健康確認を行う人。生命保険協会が行う資格試験に合格する必要があります
3.告知書の質問内容の事例
告知書の質問内容は、保険会社や保険の種類等により違いがありますが、例えば以下のようなものがあります。
■告知書の質問内容(一例)
最近3ヵ月以内に、医師の診察・検査・治療・投薬のいずれかを受けたことがありますか | いいえ・はい |
過去5年以内に、病気やけがで継続して7日以上の入院をしたことがありますか | いいえ・はい |
過去5年以内に、病気やけがで手術を受けたことがありますか | いいえ・はい |
過去5年以内に、別表
(*1)
の病気で医師の診察・検査・治療・投薬を受けたり、その他の病気やけがで7日以上の医師の診察・検査・治療・投薬を受けたりしたことがありますか
(*1)別途提示されます | いいえ・はい |
過去2年以内に、健康診断・人間ドックを受けて以下
(*2)
の異常を指摘されたことがありますか
(*2)実際には該当するものが示されます | いいえ・はい |
以下
(*3)
のいずれかの身体障害がありますか
(*3)実際には該当するものが示されます | いいえ・はい |
<女性の方>
過去5年以内に、妊娠・分娩にともなう異常で、入院したり手術を受けたりしたことがありますか | いいえ・はい |
「はい」に該当した場合は、その内容についてさらに詳しく告知することになります。
4.きちとんと告知しないと告知義務違反になる!
「告知義務違反」とは、被保険者が、 故意または重大な過失によって重要な事実について告知しなかったり、事実と違うことを告げたりすること です。違反行為ですので絶対にしてはいけません。
告知義務違反が発覚するケースとしては、例えば、保険金や給付金を保険会社に請求したときに、保険会社が医療機関などに調査を行い、その際に発覚する場合や、契約後に無作為に選んだ一部の加入者宅に保険会社の調査員が訪問して行う契約確認により発覚する場合などがあります。
5. 告知義務違反をしたら、契約解除になる可能性も!
告知義務違反が判明すると、 保険会社はその契約を解除 できます。解除になると、その前に給付金や保険金の支払事由が発生していても、保険金や給付金は支払われません。また、保険契約を解除した場合に、解約返戻金があるときにはその分が払い戻されます。
ただし保険金や給付金を請求する場合に、 その傷病の原因と告知義務違反とされる内容に全く因果関係がないときは保険金や給付金は支払われます 。
また以下のような場合は、保険会社は保険契約を解除できないことになっています。
保険契約を解除できないケース
-
契約が契約日(または復活日)から2年
(*)
を超えて有効に継続した場合
(*)この期間は保険会社により異なります - 生命保険会社が解除の原因を知ってから1ヵ月以内に解除を行わなかった場合
- 保険募集人等が契約者または被保険者に対し、事実の告知を妨げたり、事実を告げないことをすすめた場合
ただし、契約解除の対象となる2年を経過したあとでも、重大な告知義務違反があったときは「詐欺による契約の取り消し」となる場合があります。また、詐欺行為の場合は保険料も戻りませんので注意してください。
6. うっかり告知を忘れていたら、あとからでも告知しよう
もしも、告知忘れや勘違いによる告知内容の間違いなどに気づいたら、保険会社にすみやかに連絡しましょう。 追加告知を行い、新たな書類や診断書を提出することで再度、診査をやり直す ことになります。
場合によっては保険が取り消しになったり、契約内容を変更せざるを得なくなったりする状況になるかもしれません。それでも、あとから告知義務違反が判明すると一方的に契約解除されたり、悪質とみなされて保険料が戻ってこなかったり、今後保険に加入できなくなるという可能性もありますので、そのままにしないほうがよいです。
7.まとめ:生命保険の告知と注意点
生命保険の告知と注意点についてまとめましたので参考にしてください。
- 生命保険の告知は、保険加入者の公平性を期するために必要なものです
- 告知書には事実をありのままに記入しましょう
- 口頭で伝えただけでは告知にはなりませんので注意しましょう
- 虚偽の申告をしたり、うっかり間違えたとしても告知義務違反となりますので、十分に注意しましょう
- 告知義務違反をすると、契約を解除されたり、給付金や保険金が支払われない場合があります
- 告知忘れなどに気づいたときは、速やかに保険会社に連絡しましょう