日本人女性がかかるがんの第1位となっている「乳がん」。罹患率は30代から増加しはじめ、40代後半から50代前半にピークを迎えるため、ちょうど 子育てに奮闘するママ世代にとっては特に注意が必要 とされる病気のひとつでもあります。
そこで今回は、乳がんの症状をはじめ、「妊娠中や授乳中でも乳がん検診が受けられる?」といった検診にまつわる疑問も解説します。
1.そもそも乳がんってどんな病気?
乳がんは 乳房にできる悪性の腫瘍 です。乳がんのほとんどは、母乳を乳頭まで運ぶ乳管から発生し、「乳管がん」と呼ばれています。
乳がんは 早期に見つかった場合は、90%以上が治る病気 と言われていますが、気づかずそのまま放置してしまうと、リンパ節や骨、肺、肝臓など、乳房以外の臓器にがん細胞が転移して、命を脅かすことになります。
2.気をつけたい!乳がんの3つの自覚症状
乳がんは、初期の段階において体調不良や痛みなどの自覚症状があまり感じられないと言われています。
では実際、乳がんに罹患した場合、どんな症状を感じることが多いのでしょうか?
2-1.乳房のしこり
乳がんの自覚症状として多いのが 乳房のしこり です。すべてのしこりが乳がんというわけではなく、乳腺症といった病気でもしこりの症状があらわれます。 乳がんのしこりは、硬く、あまり動かないのが特徴 です。
2-2.乳房のえくぼなど皮膚の変化
乳がんが乳房付近の皮膚に達すると、 えくぼのように皮膚がひきつれて見えたり、乳頭や乳輪部分に湿疹やただれができたりします。 また 乳頭の先から血が混じったような分泌液が出る症状 も見られます。
乳がんの症状として、しこりができるというイメージが強いですが、なかにはしこりは症状としてはっきりあらわれず、かわりに 乳房の皮膚が赤くなり、痛みや熱をもつ「炎症性乳がん」 という乳がんの種類もあります。
2-3.乳房周辺のリンパの腫れ
乳がんは、 わきの下のリンパ節や胸骨のそばのリンパ節、鎖骨上のリンパ節に転移しやすい と言われています。
わきの下のリンパ節に転移した場合、わきの下などにしこりができ、リンパ液の流れがせき止められてしまうため、腕がむくんできたり、腕に向かう神経を圧迫して腕がしびれたりすることがあります。
3.乳がんの検診方法とその特徴
乳がんかどうか、良性なのか悪性なのかといった診断を行うには、さまざまな検査や診断を組み合わせて行いますが、 年齢や状況に応じて適した検診方法は異なります。そこで、ここでは主な検診方法の特徴やメリット・デメリットを解説しますので、以下の説明を参考に検診をご検討ください。
3-1.問診・視触診
月経周期、初潮・閉経時期、未婚・既婚、妊娠、出産歴、病歴などを問診。医師が 乳房にしこりや変形、陥没などがないかを視触診で確認 する場合もあります。
身体に負担がかからないため、 気軽に受診できる反面、早期の乳がんは発見できないというデメリット があります。
3-2.マンモグラフィ検査
乳房を片方ずつプラスチックの板で挟んで撮影することで、小さいしこりや石灰化を見つける 検査です。広範囲に渡って検査ができ、 超早期の乳がんが発見できる というメリットがあります。
20〜30代の女性は一般的に乳腺組織が豊富なため、乳腺の重なりと小さなしこりの判別が難しい場合があるため、マンモグラフィ検査は不向きと判断されています。そのため 40代以上の女性に推奨される検査方法 です。
3-3.超音波検査(エコー)検査
超音波を乳房に当て、反射して返ってくる信号を画像化 する検査です。超音波検査ではしこり内部や表面の状態が写し出され、その画像から良性・悪性の識別をすることができます。
20〜30代の乳腺組織が豊富な乳房でもしこりを発見することが可能 です。しかし一方で、超音波検査では乳がんの石灰化を映し出すことが難しいため、診断には医師や検査技師の技術に依存してしまう面があります。
4.妊娠中や授乳中でも受けられる超音波検査
乳がんは、早期発見ができれば、ほとんどの場合治すことができるといわれており、検診を受けることがとても大切です。妊娠中や授乳中でも受けられるなら受けておきたいという方もいらっしゃるでしょう。どちらの場合も超音波検査であれば受けることは可能とされています。
4-1.妊娠中の乳がん検診
妊娠中に乳がん検診を受ける場合は、 超音波検査であれば受診することが可能です。
マンモグラフィ検査はX線を使った検査のため、胎児に影響をおよぼすおそれがあり、 妊娠中は受けることができません。
なお、超音波検査を受ける場合であっても、乳房の状態が通常とは大きく変化するため正しい診断が難しいという面があります。
4-2.出産後、授乳中の乳がん検診
妊娠中同様、 授乳中も超音波検査を受けることができます。 ただし、授乳中も通常の乳房の状態とは異なるため、検査の精度が落ちてしまうという面があります。
マンモグラフィ検査の場合は、乳腺が発達した状態の授乳中には正確な診断ができません。 マンモグラフィ検査を希望する場合は、断乳後6ヵ月 を目安にしましょう。
5.まとめ:40歳からは2年に1度の乳がん検診を
現在日本では、40歳以上の女性に対してマンモグラフィ検査による2年に1回の検診が適切とされています。
そのため 各自治体では、40歳以上の女性を対象に2年に1度の受診を推奨 しており、 費用の一部を負担してくれる 制度が整っています。40歳を迎えると、お住まいの自治体より 「乳がん検診の案内」 が送付されます(自治体によってはWEBサイトや広報誌等にてご自身で確認する必要あり)。また企業等で働いている方は、職場の健康診断で受診できる場合があります。
乳がんの早期発見のためにも、これらを活用して検診を受けるようにしましょう。