病気に備える保険の代表格ともいえる「 医療保険 」と「 がん保険 」。
しかし、医療保険とがん保険の違いがよくわからない、どちらに入るべきか、それとも両方加入が必要なのか判断がつかない、と頭を悩ませる人も多いのがこの2つの保険です。
そこで、医療保険とがん保険の違いや、それぞれのメリットとデメリット、公的な医療保険や両者の保障の範囲なども踏まえ、適切な保険を選べるような情報をご紹介していきます。保険を検討するときに、ぜひ参考にしてください。
1. 医療保険とがん保険は、保障対象となる病気の範囲が違う!
医療保険とがん保険の違いを知るには、それぞれの保険の特徴をおさえておくことが必要です。まずはそこからおさらいをしていきましょう。
1-1. 医療保険の保障概要
医療保険は、病気やけがによる入院や手術にかかるお金を保障 してくれるものです。医療保険の保障の柱となるのは、入院時にもらえる「入院給付金」と手術時にもらえる「手術給付金」の2つです。
入院給付金には、入院1日で支払われる額(入院給付金日額)を入院日数分もらえる「日額タイプ」と、まとまった金額を一括で受け取れる「一時金タイプ」があります。また、手術時にもらえる手術給付金は、入院給付金日額を倍率(5倍、 10 倍、 20 倍など条件による)で掛けた額をもらえるタイプと、1回の手術で 10 万円といったように、決まった額がもらえるタイプがあります。
これ以外にも通院時の保障や、三大疾病(がん・心疾患・脳疾患)に備える保障、先進医療の保障などが含まれている保険を選んだり、特約として付加したりするなどして、気になる保障をより手厚くカバーすることもできます。
1-2. がん保険の保障概要
がん保険は、医療保険の一種で、がんに特化した保険 です。がんと診断されたら診断給付金が受け取れたり、抗がん剤治療等、がん特有の治療を行うと給付金が受け取れたりするほか、 入院給付金が日数無制限 で受け取れるといった点が、大きな特徴となります。
近年ではがん保険への加入ニーズが高まっており、 CM などでもさまざまな保険が宣伝されているので、身近に感じる人も多いのではないでしょうか。
ニーズが高まっている理由は、がんが日本人にとって非常に身近な病気だからです。がんは 1981 年以来ずっと日本人の死因の第1位であり、厚生労働省の調査によれば、生涯で 2人に1人ががんになり、3人に1人はがんによって亡くなります。 がんになる確率の高さから、できるだけ備えておこうという人が多いのです。
1-3. 医療保険とがん保険の違いとは?
それぞれの保険の特徴がわかったところで、2つの保険の違いを確認しましょう。
1-3-1. 医療保険はがんを含む病気やけが全般に備える
医療保険は、病気やけがに対する入院や手術の費用を保障する保険です。この「病気」のなかには、がんも含まれます。ただし、保障範囲が広い代わりにがんへの保障は不足しがちという一面も。よって、これと決まった病気やけがではなく、 いろいろな病気やけがのリスクに幅広く備えるための保険が医療保険 といえます。
1-3-2. がん保険はがんに特化して手厚く備える
がん保険はさまざまな病気を広く保障する医療保険と違い、がんだけが対象となります。数ある病気のなかでも特に がんのリスクに備えたい人 に向いています。また医療保険との違いとして、医療保険は保険会社との契約が完了すると保障がすぐスタートしますが、がん保険の場合は、通常 90 日や3カ月の待期期間(免責期間)が設けられている点があげられます。これは、がん罹患の疑惑をもちつつ、先にがん保険に加入し、その後でがんと診断されて診断給付金が下りるといったことを防ぐためです。
2. 医療保険とがん保険のメリット・デメリットは?
続いて、医療保険とがん保険の関係性を掘り下げるために、双方のメリット・デメリットを見ていきたいと思います。
2-1. 医療保険のメリット・デメリットは?
前述のとおり、医療保険は特定の病気に限定せず、さまざまな病気やけがに対応できる保険です。「とりあえずこれに加入しておけば安心」という、オールラウンド型であるところが、最も大きなメリットでしょう。
一方でデメリットとしては、たとえば 「がんにしっかり備えたい」という場合に、医療保険だけでは物足りない 場合があることです。そういったときには、特約を付加して保障を強化したり、医療保険とは別に、その部分を補う保険に加入したりする方法もあります。しかし、どちらにせよ保険料が割高になってしまい、家計に対する負担が重くなりがちな点はデメリットといえるでしょう。
2-2. がん保険のメリット・デメリットは?
がん保険は、がんに特化した保険なので、(商品によりますが)がんにかかれば、診断給付金や治療にかかるさまざまな給付金を受け取ることができ、 手厚く備えられる のが最大のメリットです。
その反面、がん以外の病気やけがには対応できないという点がデメリットといえます。ただし、がんの罹患率の高さから、保障を得られる可能性はそれ以外の病気に比べてかなり高いとも考えられます。
3. 医療保険とがん保険、選ぶ前に社会保障(健康保険)も理解しておこう。
医療保険またはがん保険、どちらに加入するにせよ、私たちが受けられる公的保障について理解しておくことが必要です。日本では勤務先で加入する健康保険(社会保険)や、自営業者などが加入する国民健康保険などの公的医療保険に加入することが義務付けられています。それらの保険により、病気やけがでかかる費用をある程度カバーすることができます。
3-1. 必ず知っておきたい「高額療養費」
なかでも知っておきたいのが、「 高額療養費 」制度。 公的医療保険の範囲内で入院や手術をして高額な医療費がかかった場合に、一定額を超えると超えた分が払戻されます。 年齢や収入によって、この「一定額」は違いますが、一般的なサラリーマンであれば医療費が8万円強を超えたくらいから、払戻しされます。
3-2. 働けないときの「傷病手当金」
もう1つは「 傷病手当金 」の制度。 病気やけがにより仕事を一定期間休むことになった場合に受け取ることができます。 ただし、傷病手当金が得られるのは会社員や公務員のみ。 自営業の場合(国民健康保険の被保険者)は対象外 なので注意が必要です。
3-3. 民間の保険は公的医療保険で足りない分をカバーするためのもの
このように、私たちが元々加入している公的医療保険でも、かなりの保障を得ることができます。民間の保険への加入を検討する際には、 「公的保障でカバーできない部分を補う」 ということを意識するとよいでしょう。くれぐれも、過剰な保険に加入して家計の負担になって困ることがないようにしてください。
4. 公的保障をふまえた医療保険の必要性
結論からいってしまえば、 民間の保険は「必ず加入しなければならないもの」ではありません。年齢や収入、環境により人それぞれなので、自分自身できちんと知識を身に付けて、加入の判断をするべき です。よって、ここでは加入を判断するヒントをご紹介していきます。
まずは公的保障を踏まえて考えていきましょう。 高額療養費制度が適用されるのは、公的医療保険内でかかった費用のみ です。例えば、入院時に大部屋ではなく個室を希望する場合には「差額ベッド代」がかかります。その他、入院中の食事やパジャマやタオルといった身の回りのものを購入する費用も、実費となります。短期間の入院であればさほどのダメージはありませんが、長期間になると貯金を切り崩していくこともあるでしょう。
こういった費用を手持ちの貯金で十分カバーできるなら、医療保険の必要性は低い でしょう。一方で、 貯蓄が十分でなかったり、また傷病手当金の対象でなく休業すると収入が途絶える自営業者などは、必要に応じて医療保険に加入し備えておくのがおすすめ です。
医療保険は商品によって保険料もさまざまですが、掛け捨てタイプであれば月々の保険料が 1,000 円台のものも豊富にあります。家計と相談しながら、過不足の無い保障を得られるようにするとよいでしょう。
また、医療保険は持病や病歴によっては加入ができなかったり、年齢が上がるごとに保険料が高額になる傾向にあります。必要であれば若くて健康なうちに検討しておくことが大切です。
5. 公的保障をふまえたがん保険の必要性
がん保険の場合も、基本的には医療保険と同じです。公的保障を踏まえて、足りない部分を自分の貯金などで賄えるかどうかを考えましょう。
がんと診断された上にお金の心配も重なるとなると、精神的な負担はかなりものになります。がん保険の場合は、 がんと診断されると「がん診断給付金」がもらえる一時金タイプがあり、現在の主流 となっています。
その他、手術をせずに抗がん剤治療を行うケースも多いことから、治療や通院をメインに保障するタイプや、女性特有の子宮がんや乳がんに手厚く備えられるタイプもあります。どれを選ぶかは、自分が必要とする保障によって変わってきます。
当然ながら、あれもこれもと保障をつけてしまうと、その分保険料は高額になります。ですから、ポイントを絞って月々 3,000 円程度のがん保険を選ぶことで、家計への負担もそれほど大きくなく、がんへの不安にも対応できるのではないでしょうか。
一生のうちに 2人のうち1人ががんを経験するという罹患率の高さを考慮すれば、がんに対する備えは誰にとっても必要 です。再発リスクの高さや通院の長期化などもがんの特徴なので、金銭的な面についてよりシビアに考えて、加入の検討をする必要があるでしょう。
6. 医療保険とがん保険はどちらに入るべき?
医療保険、がん保険への加入を検討する際には、
- 医療保険にだけ加入する
- がん保険だけに加入する
- 両方に加入する
- 医療保険にがん保障を付帯する
といった組み合わせのパターンが考えられます。
がんを含めた幅広い病気に対応できるようにしたい場合は (1) 、とにかく「がん」に手厚く備えたいという場合には (2) が有力な選択肢になるでしょう。そして、医療保険にも加入しつつ、がんにも手厚く備えたいという場合には、 (3) または (4) の検討となります。
6-1. 両方に入る場合は保障の重複に注意!
医療保険とがん保険の両方に加入するの場合は、それぞれの保障の範囲をきちんと確認することが大切です。医療保険とがん保険の両方に加入すると、実際に(それぞれの保障対象となる)入院・手術を受けたときに、両方の保険から給付を受けることができます。しかし、当然ながら両方の保険料を毎月支払うことになるので、給付金をもらえても結果的に損をすることになりかねません。
保障が重複しないように注意することと、医療保険、がん保険ともに不要な保障を取り外しやすい、フレキシブルなものを選ぶことがコツ です。
6-2. 医療保険だけでがんの治療費はカバーできる?
医療保険とがん保険の組み合わせなどを考える際には、医療保険でどの程度がんの治療費がカバーできるかを理解しておかなければいけません。それについても解説しておきましょう。
がんで手術、入院をした場合には、高額療養費制度である程度カバーできるうえに、医療保険の加入があれば手術・入院給付金を受け取れます。がんの種類やステージにもよりますが、胃がんや肺がんなどの平均入院日数は 20 日程度です。差額ベッド代や食費などを考慮しても、多くの場合、医療保険の範囲内でまかなうことができるでしょう。
しかし、がんになると、手術して退院して治療が終了となるとは限りません。その後も通院による放射線治療を続けたり、定期的な検査も必要となります。そういった費用については、医療保険では十分にまかなうことは難しいでしょう。会社員であれば、働けない場合は傷病手当金を受け取れますが、働きながらの治療には対応できません。
医療保険ではカバーでしきれない部分もあることを理解し、それについてがん保険で備えるのか、貯金でまかなえるのか、検討する必要 があります。
7. まとめ:病気やけがに幅広く備える医療保険、がんに手厚いがん保険
ここでは、医療保険とがん保険の違いについて考えてみました。 幅広くさまざまな病気やけがに対応できる医療保険と、日本人に最も身近ながんに手厚い保障ができるがん保険。 また加入を検討する際には、あわせて公的保障についても把握することが大切です。
そして、自分は何にどう備えたいのか、月々保険料として支払える額は家計のうちいくらなのかを整理してから、自分に合った保険商品を探すようにしましょう。