「医療保険」と「生命保険」の違いについて、なんとなくわかるけど、細かいところがはっきりしないという方も多いのではないでしょうか?
簡単にいえば、 病気やけがをしたときの医療費に備えるのが医療保険 で、 死亡したときに家族にお金を残したり、将来必要となる資金を準備したりするのが生命保険 です。
昔から生命保険と医療保険をセットにした保険が売られてきた影響で、両方の違いがわかりにくくなったり、混同してしまったりすることがあります。
この記事では、医療保険と生命保険について、保障内容やそれぞれの保険種類などをわかりやすく説明するとともに、その違いとどのようなときにどの保険を選べばよいかも解説しています。ぜひお読みいただき、自分に必要な保険を選ぶための基礎知識としてご利用ください。
1. 医療保険の概要|その種類とタイプ
医療保険は、病気やけがで入院・手術などすることになったときの医療費を保障する保険ですが、その保障内容やしくみによりいくつかの種類やタイプに分けられます。
1-1. 医療保険の種類
医療保険には、細かくは多くの種類がありますが、はじめに以下のおもな3種類についておさえておくとよいでしょう。
1-1-1.一般的な医療保険
病気やけがを治療するために 入院、手術をした場合、「入院給付金」や「手術給付金」を受け取ることができる保険 です。
入院給付金は、入院1日あたりいくらと日額が決まっているタイプが一般的で、入院1回あたりの支払限度日数と通算の支払い限度日数が決められています。近年は入院日数に関係なく1入院あたりいくらと一時金が出るタイプの医療保険が増えてきています。
主契約にプラスして、先進医療や三大疾病、通院などを保障する特約を付加することが可能です。
1-1-2.女性向け医療保険(女性保険)
医療保険の一種で、 乳がんや子宮頸がんなどのような女性特有の病気を手厚く保障する保険 です。女性保険といわれることもあります。
女性向け医療保険は、一般的な医療保険やがん保険に女性疾病特約がセットになったものが多く、普通の医療保険と比べると、女性疾病特約の分、保障は手厚い反面、保険料は少し高めになっている傾向があります。
1-1-3.がん保険
がんを手厚く保障する保険 です。一般的には、がんと診断されたときに受け取れる給付金(一時金)が主な保障で、入院給付金や手術給付金などもついています。
がんは再発リスクが高いこともあり、がん保険の入院給付金には、医療保険のような支払い限度日数はありません。また、最近では医療の進歩により通院による抗がん剤・放射線治療を行うケースが増えています。そういったがん特有の治療も、現行のがん保険であればカバーすることができます。
1-2. 医療保険のタイプの違い
医療保険は前節の保険種類とは別に、保険期間や貯蓄性の有無によって、タイプ分けをすることができます。
1-2-1.「終身型」と「定期型」
医療保険は、 一生涯の保障を得られる終身型 と、 一定期間だけを保障する定期型 に分けることができます。
終身型は加入時からずっと保障内容も保険料も変わりません。一方で、定期型は10年など決められた保険期間で終わり、契約を延長する場合は、その時の年齢に応じた保険料に変わります。若い時には保険料は低めですが、更新のたびに金額がアップしていくことになります。
1-2-2. 「掛け捨て型」と「貯蓄型」
掛け捨て型は 、病気やけがを保障する機能はありますが、生存給付金や健康還付金など、 お金が戻ってくる機能がないタイプ です。そのため、保険料は割安で、軽い負担でいざというときに備えることができます。
一方、 貯蓄型は 一定の年齢(期間)まで加入すると、 生存給付金や健康還付金などが受け取れるタイプ です。ただし、貯蓄機能があるため保険料は割高です。 また、一部に一定期間が終了すると支払った保険料が戻ってくるリターン型とよばれる商品もあります。
現在販売されている医療保険の多くは掛け捨て型です。
2. 生命保険の概要|その種類とタイプ
生命保険とは人の生死に関連した保障のある保険のことをいい、その保障内容やしくみによりいくつかの種類とタイプに分けられます。
2-1. 生命保険の種類
生命保険は、まずは、「死亡保険」、「生存保険」、「生死混合保険」の大きく3つに分類でき、それぞれさらにいくつかの種類に分けられます。
-
死亡したときに保険金が出る「死亡保険」
被保険者が死亡または高度障害になった場合に保険金を受け取れるタイプの保険です。
(例)定期保険、終身保険、収入保障保険 -
所定の期間、生きていると保険金を受取れる「生存保険」
被保険者が生存していた場合に保険金を受け取れるタイプの保険です。
(例)個人年金保険 -
生きていても死亡しても保険金を受取れる「生死混合保険」
被保険者が保険期間中に死亡または高度障害になった場合、満期まで生存していた場合のどちらでも保険金を受け取れる保険です。
(例)養老保険
この3つの分類も示しながら、生命保険のおもな種類を紹介します。
2-1-1. 定期保険[死亡保険]
定期保険は、死亡したときに保険金を受け取れる保険で、保険期間が10年、20年など、あるいは60歳まで、65歳までなどと、一定期間に限られています。原則として満期保険金がなく、保険料は掛け捨てです。
2-1-2. 終身保険[死亡保険]
終身保険は、 死亡するまで一生保障が続く保険 です。人はいつか必ず死亡するので、加入していたらいつかは保険金が支払われます。そのいつか支払われる保険金を積み立てていくしくみであるため、途中で解約したときに解約返戻金を受け取ることができます。
このように、終身保険には貯蓄機能があるため定期保険と比較すると保険料は割高です。一生涯の保障を得たい人や保険とともに貯蓄も得たいという人の選択肢になります。
2-1-3. 収入保障保険[死亡保険]
収入保障保険は、定期保険の一種なので保険期間は一定です。被保険者が死亡した場合、保険金受取人は、 保険金を一定の期間、年金形式で受け取ることができます 。保険金額が経過年数とともに減っていくタイプで、こどもが小さいうちには手厚い保障が得られ、その後は(成長とともに)、保障が少しずつ減っていくという、ライフステージの変化に沿った効率的な保険です。
2-1-4. 個人年金保険[生存保険]
個人年金保険は、一定期間、保険料を支払っていき(一括支払いのものもある)、あらかじめ決められた年齢になると年金が支払われる保険です。もし年金を受け取る前に被保険者が死亡した場合は、既払込保険料相当額の死亡給付金を受け取ることができます。
2-1-5. 養老保険[生死混合保険]
養老保険は、保険期間内に 死亡または高度障害状態になると死亡保険金 が支払われ、 満期まで生存していた場合には死亡保険金と同額の満期保険金 を受け取れる保険です。かならず既定の保険金が支払われる保険なので保険料は割高です。
2-2. 生命保険の積立金の運用方法の違いによるタイプ
次に、生命保険のタイプの違いについて確認していきます。ここでいうタイプとは、おもに保険の積立金の運用方法による分類となります。
2-2-1. 定額保険
契約をした際に定めた 保険金額や解約返戻金が、保険期間中ずっとかわらないタイプ の保険です。保険会社は、決められた金額を確実に支払うために堅実な運用をします。
リスクが低く、あらかじめ将来の受取金額の目途を立てやすいことが特徴です。ただし、保険金等の金額が決まっている分、インフレ(物の値段が上がりお金の価値が下がること)の影響を受けやすいという側面もあります。特に運用方法についてうたっていない(この後に説明する「変額」や「外貨建」という表記がない)一般的な保険は、基本的にこの定額保険です。
2-2-2. 変額保険
保険会社の 運用実績によって、受け取る保険金額や解約返戻金が増減するタイプ の保険です(ただし死亡・高度障害保険金は契約した金額が最低保証される)。定額保険に比べて保険料が割安であることや、インフレに対応できることがメリットです。ただし、運用実績が悪ければ保険金や解約返戻金は減少してしまうというリスクがあります。
2-2-3. 外貨建て保険
契約者が払い込む 保険料を、保険会社が外貨(米ドルや豪ドルなど)で運用するタイプ の保険です。円建ての保険に比べて予定利率が高いことや保険料が割安であることがメリットですが、逆に、為替リスクにより将来受け取る金額が減ってしまう可能性があることや、為替手数料が発生することがデメリットになります。
3. 医療保険と生命保険の違い
医療保険と生命保険についてそれぞれ内容を確認してきましたが、それを踏まえて、2つの保険の違いを、「保障内容」と「給付を受ける人」という面から整理していきましょう。
3-1. 医療保険と生命保険は、保障が違う
医療保険と生命保険の大きな違いは、 保障の対象が病気やけがであるか、それとも人の生死であるか という点にあります。上述のように、医療保険は病気やけがで入院・手術を行った際に生じた医療費を保障する保険である一方で、生命保険は契約者が死亡、あるいは生存しているという条件のもと保険金が支払われます。
3-2. 給付を受ける人が違う
医療保険と生命保険では、給付を受ける対象も異なります。 医療保険の場合、被保険者が病気やけがをした際に、原則として本人 に給付金が支払われます。
一方、生命保険では保険金受取人は契約時に特定の誰かを指定することになります。 死亡保険では、契約者が死亡した際に契約者の遺族など(受取人として指定した人) に保険金が支払われます。 生命保険のうち 生存保険(個人年金保険、養老保険の満期保険金等)については、契約者本人または配偶者等の家族(受取人として指定した人) に保険金が支払われます。
4. 何に備えたいかにより、医療保険か生命保険かは選べる
どんなときに医療保険、あるいは生命保険を選ぶべきなのかを改めて整理し、ご紹介します。
4-1.医療保険を選ぶべきとき
医療保険に加入するのは、以下のような目的があるときです。
4-1-1. 病気やけがの医療費に備えたい
病気やけがに備えたいという場合は、医療保険を選ぶことになります。女性の場合は、女性特有の疾病に備えるために、女性向けの医療保険も選択肢に入れるとよいでしょう。
なお、 民間の医療保険を検討する際には、高額療養費制度や傷病手当金といった、公的医療保険で得られる保障を考慮 することも大切です。
4-1-2. 高額ながんの治療費に備えたい
がんに対する保障を手厚くしたいという場合は、通常の医療保険ではなく、がん保険を選ぶとよいでしょう。がんは一生のうち2人に1人が罹患するというきわめて身近な病気であり、がんの罹患率は男女共に高齢になるほど高まります。 がんは通院による長期の治療が必要になったり、先進医療を選択する場合には金銭的負担が大きくなったりするケースも見られます。リスクを理解した上で、必要に応じて加入を検討しましょう。
なお、最近は医療保険にがん保障を特約として付加するという備え方ができる医療保険が増えてきています。
4-2.生命保険を選ぶべきとき
生命保険に加入するのは、以下のような目的があるときです。
4-2-1. 万一のことがあったときに遺族にお金を残したい
自分に万一のことがあった場合に残された家族が経済的に困るようなことは避けたい、と考えているならば生命保険(死亡保険)に加入しておく必要があります。生命保険の中でも、終身保険・定期保険・収入保障保険のどれを選ぶかは、それぞれの特徴を理解したうえで、ライフステージやライフプラン、家計と照らし合わせて決めていきましょう。
4-2-2. 老後資金に備えたい
公的年金だけでは老後の資金が不安という人の場合、個人年金保険が選択肢にあがります。 個人年金保険料控除の対象になるなど税金面でのメリット も見逃せません。ただし、低金利時代の今、大きなリターンを得るのは難しいのが実情です。個人型確定拠出年金(iDeCo)など、他の選択肢と比較検討したり併用することをおすすめします。また、老後資金作りと万一の保障を両方得られる養老保険もありますが、保険料が割高な点には注意が必要です。
5. まとめ:医療保険、生命保険の違いを理解して自分の目的にあった保険を選ぼう
医療保険と生命保険の違いは、病気やけがに備えるか、死亡や生存(貯蓄)に備えるかという点にあります。またその中でもそれぞれいくつかの種類の保険に分かれています。
さらにいうと、生命保険に特約として医療保険を付けられる商品や医療保険に死亡保障がついている商品などもあり、生命保険と医療保険は一体化して販売されているケースもあります。このあたりが2つの保険の違いをわかりにくくしている原因の一つと言えるでしょう。しかしそのような商品でも、一つ一つの保障を見ていくと、生命保険の保障、医療保険の保障と区別はつけられます。
この記事を参考にそれぞれの保険の特徴や目的を理解したうえで、自分のニーズにあった保険を選択していきましょう。