持病があっても入りやすい保険には、大きく分けて 2 種類があります。一つは告知項目が少ない引受基準緩和型(限定告知型)の保険、もう一つは告知のない無選択型の保険です。
それぞれどのような特徴やメリット・デメリットがあるのか、どの保険を選べばよいのかを詳しくわかりやすく解説します。
さらに、持病がある方がより良い保険に入るための加入の仕方についても詳細に説明します。場合によっては普通の保険に入れる場合もありますので、ぜひ、この保険加入法をマスターして、少しでもよい保険に入れるようになってください。
1. 持病があっても入れる保険とは?
病気の治療中とか、持病があるような場合は、生命保険や医療保険に入れなかったり入れても条件がついてしまう場合があります。しかし、各社から持病があっても比較的に入りやすい保険が発売されています。
1-1. 入りやすいのは引受基準緩和型(限定告知型)や無選択型の保険
持病があっても入りやすい保険とは、健康告知が簡単な保険や告知がない保険を指します。前者のことを引受基準緩和型保険(限定告知型保険)、後者のことを無選択型保険といいます。
入りやすい保険の説明に健康告知という言葉が出てきましたが、このように、保険に入れる・入れないには告知が関係してきます。普通の保険の健康告知に引っかかって保険に入れないような人でも、告知の項目が少なくなると入りやすくなりますし、そもそも告知がないと誰でも入れるようになるからです。ただし、入りやすくなればなるほど保険料は割高になります。
なぜそのようなことになるかということについては、保険のしくみそのものを理解しておく必要があります。
1-2. 持病があると保険に入りにくい理由を理解しておこう
保険は、多くの加入者から保険料を集めて、生命保険なら死亡した人の遺族に、医療保険なら病気やけがをした人に保険金を支払うというしくみです。
だから、持病があって病気を再発しやすい人や合併症がおきやすい人、持病が原因で健康な人より死亡率が高い人などが保険に加入すると、その人(またはその人の保険金受取人)が保険金を受け取る確率があきらかに高くなってしまいます。
そうなると、健康な加入者にとって不公平な状態になってしまいます。そのため、保険会社は健康状態に大きな差がある人が同じ保険に加入することがないようにチェックしなければなりません。このチェックにあたるのが保険に入るときの健康告知であり、健康状態がよくないと保険に加入できないということが起こる理由です。
そして、健康状態があまりよくない人でも入れる保険を作った場合、保険会社としては保険金や給付金を支払わなければならない可能性が高くなるので、保険料はその分高くしないと保険が成り立たないということになるのです。
2. 加入しやすさで分かれる3種類の保険と選び方
保険は健康告知のレベルにより入りやすさが変わってくることがわかったと思いますが、現在、販売されている保険は、加入しやすさ(告知の厳しさ)によって大きく3種類に分けられます。
2-1. 3種類の保険の違い
3 種類とは、健康告知のある普通の保険、告知項目が少ない引受基準緩和型(限定告知型)の保険、健康告知がない無選択型の保険です。
持病がある場合、普通の保険がもっとも入りにくいですが保険料はもっとも割安で保障も充実しています。告知が簡単になるほど、保険料は割高になり保障も限定されていきます。
■3種類の保険の特徴(メリット・デメリット)
保険種類 | 普通の保険 | 限定告知型保険 | 無選択型保険 |
入りやすさ |
病気があると入りにくい
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病気があると入りにくい
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病気があっても入れる
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保障内容 |
保障が充実
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加入後1年間は保障が半額
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保障は限定的
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保険料 |
普通
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割高
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かなり割高
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商品数 |
とても多い
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少ない
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非常に少ない
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持病のある人にとって、入りやすいということはメリットではありますが、入りやすさに反比例するように保障内容や保険料などの他の条件は悪くなっていく(デメリットがある)ということをしっかり理解しておくことが大切です。
2-2. 3種類の保険の検討手順
持病がある人が保険に入る場合に、3種類の保険のどの保険から加入を検討するかというと、まずは普通の保険からです。持病があるから持病があっても入りやすい保険にしようと短絡的に考えてしまうのは間違いです。結果的に断られることになったとしても、加入者にとってより条件のよい普通の保険から申し込んでみましょう。
そして、普通の保険にチャレンジしてダメだった場合に、数項目の質問に該当しなければ入れる引受基準緩和型(限定告知型)の保険に申し込みます。この保険を飛ばして、いきなり健康告知のない誰でも入れる保険に入ることのないようにご注意ください。
さらに、引受基準緩和型の保険にも入れなかった場合に、健康告知なしで誰でも入れる無選択型の保険を検討します。しかし、この保険は保障内容に制限があり保険料もかなり割高になります。
たとえば、 40 歳の人が入院日額1万円の無選択型の医療保険に入る場合、月額保険料は1万円くらい になります。このような保険に入って、将来得をするか損をするかは明言はできませんが、入院日額1万円のために月々1万円ずつ支払っていくのは、正直ちょっと疑問があります。このような保険に入るのか、入ったつもりで貯金していくのかは、 十分に検討してください。
2-3. まず普通の保険からチャレンジすべき3つの理由
保険加入時に、たとえ持病があっても普通の保険から検討すべきという話をしましたが、その理由を詳しくみていきましょう。理由は以下の3つです。
- 保険料がいちばん安い
- 保障が充実していて、保険種類も多い
- 持病があっても入れる場合がある
1・2 の理由については、前節ですでに説明ずみですが、 3 の持病があっても入れる場合があるというのはどういうことでしょうか?
保険会社は、申込時の健康告知の内容をみて保険を引き受けるかどうか判断します。そしてその判断は、病気の種類や治療状況、完治している場合は完治してからの期間などによって変わってきます。だから同じような持病でも入れたり入れなかったりということがあります。また、この判断基準は保険会社によっても少しずつ違っています。
そのほか、 そのままでは入れなくても、保険料が少し割り増しになったり一定の病気の保障が制限されたりという条件付なら入れる場合もあります。 たとえば、保険料が割り増しになっても持病があっても入れる保険よりは安いなど、メリットがあることがあるので、まずは普通の保険に申し込んでみることが大切なのです。
さらに、保険の種類によっても入りやすさが違います。たとえば、医療保険とがん保険では、一般的にがん保険の方が入りやすいです。これは、がん保険ががんという病気に特化した保険だからです。他の病気があったとしても、それががんになる確率を高めることがなければ、他の加入者と不公平になりにくいからです。
2-4. 3種類の保険の告知内容と保障の制限
3種類の保険の告知の違いと持病があっても入りやすい保険の保障の制限事項について、もう少し詳しくみていきましょう。
2-4-1. 普通の保険
加入条件が緩和されていない普通の保険です。保険の申込時に告知書により健康状態を告知します。保険種類や保障の大きさなどによっては医師の診査が必要な場合もあります。
告知は、保険会社からの質問事項に答える形になります。質問内容は保険会社や保険商品によって違いがありますが、一般的には「過去3ヵ月以内の通院や治療の状況」、「過去5年以内の病気やけがによる手術等の状況」、「過去2年以内の健康診断の結果」、「がんの罹患歴」などについて質問されます。
持病があると、これらの質問に該当することになります。
2-4-2. 引受基準緩和型保険(限定告知型保険)
数項目の質問に「はい」または「いいえ」で答えて、すべてが「いいえ」であれば入れるタイプの保険です。普通の保険よりは、告知項目が少ないため、持病があっても入りやすくなっています。
このタイプの保険の質問は保険会社によって違っていますが、たとえば、以下のような項目があります。
質問項目の一例
- 現在入院中ですか?
- 過去1年以内に入院、手術、先進医療、検査をすすめられたことがありますか?
- 過去2年以内に別表Aの病気で入院したことがありますか?
- 過去5年以内に別表Bの病気で医師の診察や検査、治療、投薬を受けたことがありますか?
※別表A 糖尿病・脳卒中、心筋梗塞、狭心症、気管支喘息、潰瘍性大腸炎、リウマチ、うつ病等
※別表B 糖尿病の合併症、がん、心臓・動脈の疾患、慢性腎不全、肝硬変、認知症、免疫不全症等
普通の保険に比べると、比較的入りやすい保険ですが、保険料は普通の保険より割高になっています。 保障内容は普通の保険と同様ですが、加入後1年間は保障額が半分に削減 される商品があります。また、持病が悪化した場合も保障の対象となります。
2-4-3.無選択型保険
基本的に健康に関する告知なしで入れる保険です。持病があっても入れる分、保険料は3種類の保険のなかで最も割高になっています。
また、医療保険では、契約前に発症していた病気に関連した入院・手術は保障されない、契約から 90 日間は病気による入院・手術は保障されないなどの条件があり、終身保険では契約から2年以内に死亡した場合は保険金が払込保険料相当額になるなどの条件があります。
3. 持病がある人が普通の保険に申し込むときの3つのポイント
持病があっても普通の保険から申し込むべきだという話をしましたが、その場合に少しでも入れる可能性をあげるためのコツがあります。以下の3つのポイントについて、注意しましょう。
3-1. きちんと持病の治療を受ける
持病があるのに、治療を受けていない、検査をしていないとなると保険に入れる可能性は低くなります。
持病があって今症状がある人は、治療をきちんと受けて薬などは指示された通りに飲むようにしましょう。また、症状がないとか経過観察中というような人は、医師から指示されたタイミングできちんと検査を受けるようにしましょう。
3-2. 正しく、詳しく告知する
保険の告知に際しては、自分の病気についてできるだけ詳しく説明してください。病気によって告知のポイントも変わってきますが、以下の項目のように病状や治療状況などを細かく告知する必要があります。
- 病気になった時期
- 治療内容
- 服用している薬
- 現在の症状
- 治療を受けている病院名
- その病気に関する検査数値がある場合は数値
告知のときには、持病のことを書くと入りにくくなるのではないかという意識により、病歴などを詳しく書くのを躊躇してしまいがちですが、実はそれは逆効果です。
保険会社としては、病気があったとしても、それが悪化したり他の病気の原因になったりしない、死亡率を引き上げることにつながらないと判断できれば、加入してもよいという判断を出せますが、その判断材料がなければ、加入させないという結論を出さざるをえません。だから、 きちんと治療を受けて状態がよいのであれば、そのことをできるだけ詳しく告知した方がよい のです。
3-3. 複数の保険会社に申し込む
保険に入れるかどうかは、病気の種類や治療状況、完治している場合は完治してからの期間などによって細かく判断されますが、その判断基準は保険会社によって少しずつ違っています。同じ病気・病状であっても、A社では入れなかったがB社では入れたといったことは実際に起こっています。
重い病気や難病などで基本的に保険には入れないという場合を除いて、きちんと治療を受けていて病状が安定していたり完治していれば、1社で断られても他の保険会社で入れる可能性もあります。持病がある人は、手間はかかりますが、複数の保険会社に申し込んでみるとよいでしょう。
4. まとめ:持病あるなら、あせらずゆっくり保険を選ぶべき
持病があって保険に入る場合は、入れる入れないという制約があるため、どうしても簡単に入れる保険を選びがちです。しかし、入りやすい保険ほど保険料は割高で保障も制限が多くなってしまいます。
だから、少しでも条件のよい保険に入れるように、普通の保険から順番に加入を検討していくことをおすすめします。持病があるからあせって保険に入るのではなく、逆にゆっくりと時間をかけて、よりよい保険を選ぶようにしてください。
また、 持病でも入りやすい保険に入ったあとも、病気が回復していけば普通の保険に入れるようになることがあるので、状況に応じて保険の見直しをすることも大切 です。