通常、医療保険やがん保険には先進医療特約をつけられます。しかし、そもそも本当に必要なのでしょうか。この記事では、先進医療の概要とともに、先進医療特約はいらないと言う意見についても紹介しています。さらに先進医療特約をつける場合のポイントも解説していますので、先進医療特約をつけるかどうかの判断材料やつける際の注意点として、ぜひ参考にしてください。
1.そもそも先進医療とは?
先進医療とは、国が承認した先進性の高い医療技術を用いる治療です。 将来、保険給付の対象とするかどうかを評価中の治療 です。医療技術ごとにその治療を行う施設の基準が設けられており、基準に該当する医療機関が届け出をすることで、保険診療と併用して先進医療を提供することができます。したがって、先進医療は高度な技術をもつ医療スタッフと設備がそろう施設でなければ受けられません。
2.先進医療にかかる費用は全額自己負担になる
先進医療は保険給付とするかどうかを評価中の治療なので(まだ保険給付の対象となっていない)、公的医療保険の対象にはなりません。そのため、先進医療部分にかかる費用は全額自身で負担する必要があります。ただし、自由診療とは違い、 先進医療は他の保険診療との併用が認められています 。そのため治療の一環として先進医療を受ける場合、先進医療にかかる費用以外は公的医療保険の対象となります。
たとえば、医療費の総額が150万円であり、このうち保険適用の費用が100万円で先進医療の費用が50万円であるとします。この場合、保険適用分の100万円についての自己負担額は3割の30万円となります。一方、先進医療の費用は50万円の全額を自己負担する必要があります。したがって、自己負担額の合計は80万円となります。
ちなみに、保険適用部分の費用は高額療養費制度が活用できます。1か月の医療費の自己負担には限度額が設けられており、限度額を超えた分は高額療養費の申請により戻ってきます。
3.先進医療の種類
先進医療には、先進医療Aと先進医療Bの2つの区分があります。以下でそれぞれの内容について説明します。
3-1.先進医療A
先進医療Aとは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」で承認された医薬品や医療機器などを使用する医療技術です。令和7年2月1日現在、先進医療Aには25種類の治療が定められており、陽子線治療、重粒子線治療、家族性アルツハイマー病の遺伝子診断などがあります。
3-2.先進医療B
先進医療Bとは、薬機法で承認されていない医薬品や医療機器などを使用する医療技術です。令和7年2月1日現在、49種類の治療が定められており、インターフェロンα皮下投与及びジドブジン経口投与の併用療法、腹腔鏡下センチネルリンパ節生検、ハイパードライヒト乾燥羊膜を用いた外科的再建術などがあります。
4.先進医療の治療例
ここでは先進医療の治療について、いくつか紹介します。
※参考:先進医療の各技術の概要 | 厚生労働省
4-1.陽子線治療
陽子線治療とは、放射線の一種である陽子線の照射による悪性腫瘍の治療方法です。陽子線治療が先進医療の対象となる適応症としては、頭頚部腫瘍(脳腫瘍を含む)、肺・縦隔腫瘍、消化管腫瘍などがあります。ただし、治療を受けられるのは根治的な治療法ができる場合のみとなります。
4-2.重粒子線治療
重粒子線治療とは、重粒子線を腫瘍に照射する治療方法です。先進医療の適応症の例をあげると、肺・縦隔腫瘍、肝胆膵腫瘍、泌尿器腫瘍または転移性腫瘍などです。陽子線治療と同様、重粒子線治療を受けられるのは、根治的な治療法ができる場合のみとなります。
4-3.家族性アルツハイマー病の遺伝子診断
家族性アルツハイマー病の遺伝子診断とは、家族性アルツハイマー病の原因遺伝子の変異についての診断のことです。正確な診断に基づく、患者ごとの病気の特徴や今後の見通しの推定が可能となり、医療方針やリハビリの計画を立てることができます。
5.先進医療の実施件数とかかった費用
先進医療はどの程度実施されているのでしょうか。ここでは、実際に行われた先進医療の件数や費用の実績について紹介します。
5-1.実施件数
厚生労働省が公表している「中央社会保険医療協議会 総会(第572回)議事次第(令和5年12月13日開催)」によると、先進医療の年間の実施件数は、 陽子線治療が824件 、 重粒子線治療が462件 、家族性アルツハイマー病の遺伝子診断が4件です(令和5年6月30日時点)。他の治療も含めた合計の実施件数は、 先進医療Aが142,653件、先進医療Bが1,629件、あわせて144,282件 でした。
5-2.かかった費用
同じく「中央社会保険医療協議会 総会(第572回)議事次第(令和5年12月13日開催)」によると、先進医療を受けるためにかかった実際の費用についてもデータがまとめられています。先進医療総額をもとに計算すると、先進医療にかかった1件あたりの費用は、 陽子線治療が約266万円 、 重粒子線治療が約314万円 、 家族性アルツハイマー病の遺伝子診断が約3万円 です。治療によってかかる費用は大きく異なり、比較的リーズナブルなものから非常に大きな金額がかかるものまでさまざまです。
※参考: 中央社会保険医療協議会 総会(第572回)議事次第
6.先進医療特約とは?
先進医療にかかる費用のなかには高額なものがあり、その費用を捻出できなければ治療を受けられない可能性があります。どんな先進医療が必要になってもよいように備える方法として、先進医療に関する保険(特約)があります。先進医療特約は、医療保険やがん保険への付帯が可能で、特約をつけておけば、先進医療が必要になった際に発生する費用の負担を軽減できます。
7.先進医療特約がいらないという意見もある
先進医療特約はいらないと言われる場合もあります。ここでは、その理由について解説します。
7-1.先進医療を受ける可能性は決して大きくはない
病気になり先進医療を受けるようなケースはまれなため、先進医療特約はいらないという考え方です。実際に先進医療の実施件数は
5-1
で紹介したとおり144,282件です。
一方、「令和5年(2023)患者調査の概況(厚生労働省)」によると、調査日(1日)に入院中であった患者は1,175,300人、外来で治療を受けていた患者は7,275,000人でした。あわせると約850万人の人が病院にかかっていることになります。年間で考えれば、もっと多くの人が治療を受けていることになります。
このような統計データからも先進医療に該当することが少ないことがわかりますが、そもそも先進医療は、該当する病気や症状の条件に取り決めがあること、またどんな病気でも通常は医師が標準治療という保険適用の治療を選択することなどから、実際に先進医療の適用となり医師からすすめられるようなケースはまれであるというのが実情です。
7-2.治療を受けられる医療機関が限られる
先進医療を実施している医療機関は高度な技術をもつ医療スタッフと設備がそろっており、厚生労働省から承認されている医療機関です。必然的にその数は限られています。そのため先進医療を受けられる医療機関が近隣にない場合、先進医療が適用となるケースで治療を希望しても、実際には治療を受けるのが困難な場合があります。
そのため、もし先進医療特約をつけたい場合は、先進医療の対象となる可能性が小さいこと、また先進医療の条件にあてはまった際に自分が実際に治療を受けられる環境にあるかどうかなどを考慮する必要があります。
8.先進医療特約が必要な人
先進医療特約を付帯すれば、万が一、高額な治療が必要になった場合に備えられます。患者の総数と比較すると先進医療の実施件数は少ないものの、先進医療を受けている人は一定数います。自分や家族に先進医療が必要になるリスクは、決してゼロではありません。
また、医療は日々進化しており、先進医療として今後さらに新しい治療法が生まれる可能性もあります。 先進医療特約の保険料は月額100円程度 なので、先進医療特約をつけて高額な先進医療も受けやすくしておけば、万が一の際に治療の選択肢を増やせます。そのような意向がある人は、先進医療特約の付帯について検討するとよいでしょう。
9.先進医療特約を検討する際に注意したいポイント
先進医療特約を検討する場合、何に気をつければよいのでしょうか。ここでは、確認しておきたいポイントについて解説します。
9-1.限度額
先進医療特約には限度額があるため、先進医療にかかった費用の全額が保障されるとは限りません。限度額は保険会社によっても異なります。たとえば、上限が1,000万円までの場合もあれば、2,000万円までの場合もあります。また、限度額の上限まで給付金を受け取ると、特約は消滅する仕組みです。
万が一に備えるには、治療にかかる具体的な費用も想定して先進医療特約の限度額を確認する必要があります。
現状、最も高い先進医療が930万円くらいなので、1000万円の限度額があれば、いちおうどんな治療でも保障範囲となります。
9-2.他の保険との重複
保険会社によっては、同社の複数の保険に重複して先進医療特約をつけられないことがあります。別の保険会社の保険であれば、それぞれに先進医療特約をつけられます。
ただし、先進医療特約は1つ入っていれば十分に費用に備えられますので複数入る必要はありません。むしろ重複しないように注意しましょう。
9-3.がん保険より医療保険に付帯を
先進医療特約は、医療保険やがん保険に付帯できます。そのため、医療保険とがん保険に加入する場合、どちらに先進医療特約をつけるかが重要です。
なぜなら、医療保険に付加した場合、どんな病気の先進医療も保障されますが、がん保険に付加すると、がん治療に関する先進医療しか保障されないからです。
両方の保険に入るのなら、医療保険に先進医療特約をつけるようにしましょう。
9-5.保障期間
先進医療特約には、更新型と終身型があります。更新型は、特約を更新するたびに保険料が上がっていきます。一方、終身型は、同じ保険料で保障が一生涯続きます。一定の保険料で保障を受け続けたい人に向いています。
9-6.医療費の支払い方法
保険会社によっては、先進医療特約の対象となる治療を受けた際、その医療費を医療機関へ直接支払ってくれるところがあります。しかし直接支払いがない場合は、まずは自分で医療機関へ費用を支払い、保険会社に給付金を申請して給付を受けることになります。そのため、直接支払い機能がないときは、高額な費用であっても一度自分で支払いをしなければならず、負担が大きくなります。直接支払いができれば高額な費用の用意が不要なため、直接支払いを希望するならこの機能の有無をを必ず確認しておきましょう。
ただし、直接支払いができるとしても、利用できる医療機関が限定されているケースもあるため、注意が必要です。
10.先進医療特約で保障を受けるには?
ここでは、先進医療特約で保障を受けるための条件について説明します。
10-1.対象の治療が先進医療として認められている
先進医療特約による保障を受けるには、 治療を受ける時点でその治療が先進医療に該当している必要があります 。先進医療は適宜見直されており、保険加入時に先進医療であった治療方法が加入後に先進医療として認められなくなる場合もあるため、注意が必要です。たとえ契約の時点で先進医療に該当していても、治療の時点で先進医療に該当していなければ、保障を受けられません。
10-2.保障範囲に該当している
すでに触れたとおり、先進医療特約の保障範囲は、保険会社や保険商品の種類によっても異なります。すべての先進医療が保障の対象に含まれているとは限らず、該当する治療が先進医療の一部に限られている場合もあります。万が一に備えるためには、特約をつける際に保障範囲をよく確認しておくことが大切です。
11.先進医療を受ける際の主な流れ
先進医療を受ける場合、基本的な流れは以下のとおりです。
- 病気に対応している先進医療技術について確認する
- 医療機関(主治医または実施医療機関)に相談する
- 実施医療機関の専門医が先進医療の必要性、合理性を判断する
- 治療内容や費用の説明を受け、納得したら同意書に署名し、治療を受ける
※先進医療は患者が希望し、医師が必要性や合理性を認めた場合に実施可能です。
12.先進医療を受けたあとの対応
先進医療を受けて費用を支払うと領収書が発行されます。先進医療特約による給付金を請求する際には、先進医療の技術料が記載されている領収書のコピーを提出する必要があります。また、税金の医療費控除を受ける際も領収書が必要です。そのため先進医療を受けて精算が終わったら、必ず領収書を受け取って保管しておきましょう。
13.医療保険・がん保険の相談をするなら「くらべる保険なび」
医療保険やがん保険について検討しているなら 「くらべる保険なび」 への相談がおすすめです。ここでは、「くらべる保険なび」の特徴を紹介します。
13-1.くらべる保険なびとは?
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13-2.くらべる保険なびの無料相談
くらべる保険なびの無料相談は 生命保険協会の業務品質評価基準をクリアした認定代理店が対応 しており、それぞれの状況に適した保険を紹介、提案してもらえます。たとえば、加入している保険の保険料負担を下げたい、ライフステージの変化に合わせて保険を見直したいなど、さまざまなニーズにあったアドバイスを受けられます。
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14.まとめ
先進医療は公的医療保険の対象にならず、自己負担が高額になる場合もあります。しかし、医療保険やがん保険に先進医療特約をつけていれば、万一、先進医療を受けた場合でも費用の負担を軽減できます。治療の選択肢を広げ、納得のいく治療を受けたいと考えるなら、先進医療特約の付帯を検討しましょう。
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