厚生年金と国民年金の違いとは?対象者や受給額などをわかりやすく解説

個人年金保険

公開日:2025年2月19日

公的年金(国民年金・厚生年金)のしくみ

公的年金には、国民年金と厚生年金があります。しかし、両者の違いについてはっきりわかっていない人もいるのではないでしょうか。この記事では、国民年金と厚生年金がどう違うのかをわかりやすく説明します。あわせて、国民年金と厚生年金の切り替え手続きや、公的年金以外で老後に備える方法なども解説するため、ぜひ参考にしてください。

1.公的年金の基礎知識

公的年金とは日本国民の老後の生活を支えるための制度で、国民年金と厚生年金の2種類があります。 国民年金については、20歳以上60歳未満のすべての国民が加入を義務付けられています 。一方、 厚生年金は会社員・公務員等が加入するもの で、国民年金も含めて加入する形となっています。

つまり、公的年金制度は国民年金と厚生年金の2階建て構造となっています。また、公的年金には老後に受け取れる老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金などもあります。

2.厚生年金と国民年金の概要

ここでは、国民年金と厚生年金についてもう少し詳しく解説します。

2-1.国民年金とは?

国民年金は、原則として20歳以上60歳未満のすべての国民に加入が義務付けられている年金制度です。

自営業者や農業、漁業などに従事している人を第1号被保険者といい、自ら保険料を納める必要があります。収入が一定額以下の場合や失業した場合など、保険料の納付が難しい場合には、免除制度や納付猶予制度を活用することもできます。

また、会社員や公務員などで厚生年金に加入している人をのことを第2号被保険者といい、その配偶者で年収が130万円未満の人を第3号被保険者といいます。第2号被保険者と第3号被保険者は自身で国民年金を支払う必要はありません。いずれも厚生年金保険料という形で国民年金分の保険料も含めて給与から天引きされているためです。

2-2.厚生年金とは?

厚生年金とは、会社員や公務員として国内で勤めている人が加入する年金制度です。厚生年金の加入条件に当てはまった従業員に加入義務が発生します。

厚生年金保険料は会社と折半して納める ことになるため全額を自身で負担する必要がありません。保険料は給料の月額に対して料率が決められており、納付額は報酬額により異なります。

厚生年金加入者は同時に国民年金(第2号被保険者)にも加入しているため、年金が支給される際には国民年金分と厚生年金分を合わせた形で支給されます。

3.公的年金で支給される年金

公的年金で支給される年金には、 老齢年金・遺族年金・障害年金 があります。公的年金は、原則として1人1年金となっており、たとえば老齢年金と障害年金の 支払い事由の異なる2つの年金を同時に受給することはできません 。2つ以上の年金の支給条件を満たしている場合には、自身でどちらかの年金を選択することになります。

3-1.老齢年金

老齢年金とは、公的年金の加入者であった人が65歳になって支給される年金のことです。国民年金には老齢基礎年金、厚生年金には老齢厚生年金があります。

老齢基礎年金は10年以上の受給資格期間があることが受給条件 となります。

一方、 老齢厚生年金は厚生年金の加入期間がある場合に支給される 年金です。老齢基礎年金に上乗せされる形で原則として65歳から支給されます。一定の要件を満たす場合は、 60歳から65歳になるまでの間に特別支給の老齢厚生年金を受給できます。

3-2.遺族年金

遺族年金とは、国民年金もしくは厚生年金の被保険者または被保険者だった人が死亡した場合に、生計を維持されていた遺族が受給できる年金です。国民年金には遺族基礎年金、厚生年金には遺族厚生年金があります。亡くなった人の年金保険料の納付状況や受給者の年齢などの条件を満たすことで遺族年金を受け取ることが可能です。具体的な受給対象者については、「 4-4.遺族年金の受給対象者 」で詳しく紹介します。

3-3.障害年金

障害年金とは、ケガなどで障害が残った場合に支給される年金であり、現役世代でも受け取れます。国民年金には障害基礎年金、厚生年金には障害厚生年金があります。それぞれ障害の状態などの受給条件があります。詳しくは「 4-5.障害年金の受給に該当する障害要件 」で紹介します。

4.厚生年金と国民年金の違い

国民年金と厚生年金にはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、5つの違いについて解説します。

4-1.対象者

国民年金は20歳以上60歳未満のすべての国民が加入対象者です。

一方、厚生年金は会社員・公務員を対象としています(常時従業員を使用する会社等に勤務している70歳未満の人)。正社員以外のパートやアルバイト(資格要件を満たす場合)も厚生年金の対象者となります。

4-2.保険料

国民年金の保険料は一律 で、 1か月あたり16,980円(令和6年度) となっています。国民年金はまとめて前払いすることで割引が適用されるため、まとまった金額を用意できる場合は前納がおすすめです。

厚生年金の保険料は、収入によって異なります 標準報酬月額と標準賞与額に対してそれぞれ18.3%(令和6年度) を掛けた金額が保険料となります。

4-3.老齢年金を受給できる加入期間

国民年金は10年以上の加入期間が必要 です。年金保険料を支払った期間や免除された期間などを合算した期間が10年以上の場合には、老齢基礎年金を受給できます。

厚生年金の場合は1か月の加入でよいですが、老齢基礎年金の受給資格期間を満たす必要があります 。また、特別支給の老齢厚生年金は1年以上の加入が必要です。

4-4.遺族年金の受給対象者

国民年金の場合には子どもがいる配偶者とその子ども (※1) が遺族基礎年金の受給対象者 となります。しかし、子どもがいる配偶者が遺族基礎年金を受給している間や、子どもに生計を同じくする父や母がいる間は、子どもには支給されません。

厚生年金の場合は、子どもがいる配偶者と子ども (※1) 、子どもがいない配偶者 (※2) 、父母 (※3) 、孫 (※1) 、祖父母 (※3) の順に遺族厚生年金を受給する資格があり、最も順位の高い人が受け取れます。 なお、子どものいる妻や子どものいる55歳以上の夫が遺族厚生年金を受給している場合は、子どもには支給されません。

※1.18歳になった年度の3月31日を経過していない、20歳未満で障害等級1級または2級の状態にあるもの。
※2.子どもがいない30歳未満の妻は、5年間受給可能。子どもがいない夫は55歳以上なら60歳から受給可能。
※3.55歳以上なら60歳から受給可能。

4-5.障害年金の受給に該当する障害要件

国民年金の場合、障害等級表の1~2級に該当する状態にあるとき に障害基礎年金が支給されます。

厚生年金の場合には、障害等級表の1級・2級・3級に該当するとき に障害厚生年金が支給されます。また、初診日から5年以内に病気やケガが治って、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害が残った場合には障害手当金として一時金が支給されます。これらの障害状態の他にも年金の納付状況などの条件があるため、詳しくは以下を参考にしてください。

5.厚生年金と国民年金の切り替え手続きについて

厚生年金と国民年金の切り替え手続きといっても、 個人の意思で国民年金や厚生年金を選んだり制度を移ったりできるだけではありません

ここでいう切り替えとは、自営業やフリーランスで国民年金加入者だった方が会社に就職したり、その逆で会社員や公務員で厚生年金加入者だった方が退職して無職や自営業・フリーランス等になった場合に必要となる、国民年金⇔厚生年金の移行手続きのことをいいます。

5-1.国民年金から厚生年金に切り替える方法

就職して会社員や公務員になった場合は、厚生年金に加入することになります。ただし、厚生年金への切り替え(加入)手続きは会社が行ってくれるため、会社からの指示に従っておけば問題ありません。会社からの指示に従って、年金手帳や基礎年金番号通知書を会社に提出しましょう。

またその際、就職前に国民年金保険料をまとめて前払い(前納)していた場合には、切り替え後に相当する保険料が還付されます。その手続きは自身で行う必要があるため、日本年金機構からの案内に従って手続きしましょう。

5-2.厚生年金から国民年金に切り替える方法

勤務先を退職し無職や自営業等になった場合には、厚生年金から国民年金への切り替えのため、国民年金への加入手続きが必要です。厚生年金の資格喪失手続きに関しては、勤めていた会社側で行うため自身で手続きする必要はありません。

会社を退職する際に発行される退職証明書や離職票などの書類や年金手帳、本人確認書類(身分証)を準備して、 お住まいの市区町村の窓口で国民年金第1号被保険者への加入手続きを行います 。扶養する配偶者がいる場合には、第3号被保険者から第1号被保険者への変更も必要です。

6.公的な老齢年金の受給額はいくら?

公的な老齢年金の受給額は、国民年金と厚生年金で異なります。厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、 国民年金のみの場合、平均月額は56,428円 です。

一方、 厚生年金加入者(会社員)の場合は平均月額144,982円 となっています。

厚生年金に加入している場合には、老齢基礎年金を含めた形で老齢厚生年金が支給されるため、国民年金のみの場合よりも受給額は多くなります。

※参考: 「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和5年12月) 厚生労働省年金局

7.老後の生活にはどのくらい資金が必要?

総務省統計局の「家計調査報告(令和5年)」によると、 65歳以上の単身無職世帯の消費支出は月145,430円 となっています。年金の受給額は個人(加入している年金の種類、扶養している配偶者や子の有無などさまざまな条件)によって異なりますが、前述した老齢厚生年金の平均月額144,982円と比較しても消費支出をギリギリ賄える程度です。

年金だけでは、通常の生活費以外にかかる突発的な支出などのリスクに備えることは難しそうです。そのため、公的年金だけに頼るのではなく、その他の備えを用意しておくことも大切です。

※参考: 「家計調査報告〔家計収支編〕2023年(令和5年)平均結果の概要」]」 総務省統計局

8.公的年金以外で老後に備えられる個人年金保険

公的年金以外で老後に備えようと思った場合、民間の保険という選択肢もあります。ここでは、個人年金保険について簡単に説明します。

個人年金保険は、毎月保険料を支払っていき、設定した年齢(65歳など)になると年金を受け取れる保険 です。公的年金の上乗せとして自分自身で用意する年金といえます。
個人年金保険料控除が使えるため、所得税・住民税が安くなる メリットもあります。

個人年金保険は年金を受け取る期間の違いにより、 確定年金 有期年金 終身年金 などがあります。確定年金と有期年金は年金を受け取る期間が決まっています。終身年金は生きている限り年金を受け取れます。自分のニーズに合ったタイプを選びましょう。

また、個人年金保険は積立金の運用方法によっても2種類に分けられ、あらかじめ 決まった予定利率で運用され年金額が決まっている定額個人年金保険 と、 運用成績により年金額が変動する変額個人年金保険 があります。

9.保険の相談をするなら「くらべる保険なび」

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10.厚生年金と国民年金に関するQ&A

ここでは、厚生年金と国民年金に関してよくある質問とその答えを紹介します。

10-1.厚生年金のメリットは?

将来受け取れる年金額が国民年金より大きいことです。老齢基礎年金分に老齢厚生年金分が上乗せされるため、将来受け取れる年金額は国民年金のみの場合と比較すると多くなります。

10-2.国民年金保険料を前払いした後に厚生年金に加入すると重複して保険料を支払うことになりますか?

自営業やフリーランス、無職等で国民年金に加入していて保険料を前納している人が、前納期間内に会社等に就職して厚生年金に加入した場合、期間が重なった部分については国民年金保険料が還付されます。重複して支払うということはありません。

国民年金保険料還付請求書が日本年金機構から送付されてくるため、案内に従って必要事項を記入して提出しましょう。

11.まとめ

公的年金としては、国民年金と厚生年金があります。国民年金は20歳以上60歳未満の国民すべてに加入の義務があるもので、厚生年金は会社員・公務員等が加入するものです。それぞれ年金の給付内容や条件などに違いがあります。

ただし、公的年金だけでは老後の生活が苦しい場合もあるため、そのような状況が予想される方は公的年金以外の個人的な備えも検討しておくとよいでしょう。

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執筆くらべる保険なび編集部

株式会社LHL(日本生命グループ)にて、「くらべる保険なび」の保険情報コンテンツの企画・編集・制作を担当しています。保険の専門知識を持つメンバーやFP資格を有するメンバーが情報収集や取材を行い、保険に関する基礎知識をわかりやすくお伝えします。

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