これから投資を始めたい方にとって、「NISA」という言葉を聞く機会は多いでしょう。しかし、実際にどのような制度で、なぜお得なのかは意外とわかりにくいものです。本記事では、初心者にもわかりやすい言葉でNISAの基本的な仕組みを解説し、投資を始める一歩をサポートします。
NISAとは?制度の基本概要
NISAに興味はあるけれど、どのような制度かよくわからない。そんな方のために、NISAの基本的な仕組みを解説します。
この目次でわかること
- NISAは非課税制度
- 始めるには口座開設が必要
NISAは非課税制度
NISAとは、「少額非課税投資制度」のことで、 投資で得た利益が一定期間非課税になる制度のことです。 通常の投資では、利益に約20%の税金がかかりますが、NISA口座では非課税です。税金がかからない分、より多くの利益を手に入れることができ、資産形成を有利に進めることができるのです。
始めるには口座開設が必要
NISAを始めるには、銀行や証券会社といった金融機関に口座を開設しなくてはなりません。 利用する年の1月1日時点で満18歳以上の方が口座を開設できます。 また、NISA口座を開設できるのは、 1人1口座 と決められています。
通常の投資のように複数の口座を開設してそれぞれ異なる商品で運用するということはできません。金融機関について詳しくは後述します。
新NISAの特徴
NISA制度は、2024年に新しく生まれ変わりました。新しいNISAの特徴を解説します。
この目次でわかること
新NISAとは?
成長投資枠とつみたて投資枠がある
対象となる金融商品
新NISAとは?
これまでのNISAでは、年間投資枠や投資対象の異なる「つみたてNISA」と「一般NISA」の2つの枠組みがあり、どちらか一方しか利用できませんでした。 新しいNISAでは、「つみたてNISA」と「一般NISA」この2つの枠組みが統合され、併用が可能 となります。また、制度の恒久化や年間投資枠の引き上げなどが行われ、誰にとっても利用しやすい制度へと進化をしています。
成長投資枠とつみたて投資枠がある
これまでの制度では、幅広い商品が対象で積極的に運用できる「一般NISA」と、投資信託でコツコツ運用できる「つみたてNISA」があり、運用スタイルや投資対象の違いで棲み分けがされていました。
2024年からは「つみたてNISA」は「つみたて投資枠」へ、「一般NISA」は「成長投資枠」へと移行されています。運用スタイルや投資対象はそれぞれに引き継がれ、「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の併用ができるようになり、使い勝手が向上しています。
対象となる金融商品
つみたて投資枠と成長投資枠は投資できる対象商品が異なります。 つみたて投資枠で購入できるのは、金融庁が認めた長期・積立・分散投資に適した投資信託のみ。コツコツと資産形成をするのに向いている制度です。
一方の成長投資枠で購入できるのは、投資信託のほか、株式(国内・海外)、J-REITなど幅広い投資先への投資が可能です。つみたて投資枠では購入できない商品への投資が可能です。
新NISAの4つのポイント
新NISAではこれまでの制度の不便さを解消するさまざまな改良が行われています。新NISAのポイントを確認しましょう。
この目次でわかること
- 制度の恒久化
- 無期限の非課税期間
- 年間投資枠がアップ
- 生涯投資枠が新設
①制度の恒久化
旧NISAでは、つみたてNISAが2042年、一般NISAが2027年までと制度自体が期間限定でした。新NISAでは、制度が「恒久化」されました。運用期間の定めがないため、より柔軟な出口戦略を立てることができ、ライフプランに合わせて活用しやすくなっています。
②無期限の非課税期間
つみたてNISAは20年間、一般NISAは5年間の非課税期間が定められていました。非課税期間終了後は、売却するか、課税口座へ移管(ロールオーバー)するかのどちらかとなります。 損失が出ていても売却しなければならないなど、不本意な選択をしなければならない可能性もあります。
新NISAではこれが撤廃となりました。 無期限となったので、非課税期間の終了を意識せず、より長期的な視点で運用が可能となりました。
③年間投資枠がアップ
NISAで投資できる金額には年間の上限額が決まっています。新NISAではこの年間投資枠が大きくアップしました。旧NISAと比較すると 「成長投資枠」は3倍の240万円、「つみたて投資枠」は2倍の120万円 となりました。合計で年間360万円まで投資でき、非課税メリットをより享受しやすくなっています。
④生涯投資枠が新設
新NISAは無期限の制度となり、際限なく非課税枠が拡大してしまうため、「生涯投資枠」という仕組みが導入されました。 生涯投資枠は1800万円 です(成長投資枠のみを利用する場合は1200万円)。この範囲内であれば、自由に売買が可能です。
成長投資枠で1200万円を投資しているなら、つみたて投資枠で600万円まで投資が可能ですし、成長投資枠で100万円しか投資していないなら、つみたて投資枠で1700万円まで投資することができます。
NISAのメリット
NISAには非課税をはじめとする複数のメリットがあります。NISAを始めるにあたり、しっかりとそのメリットを理解しましょう。
この目次でわかること
非課税による節税効果
厳選されたおすすめ商品が買える
少額から始められる
投資枠を再利用できる
非課税による節税効果
1つ目のメリットは、 非課税で投資できる という点 です。 通常、投資で得た利益には20%の税金がかかりますが、NISAでは非課税 です。例えば、10万円で購入した株式が30万円に値上がりしたタイミングで売却し、20万円の利益を得たとします。通常の投資であれば、利益に約20%、およそ4万円の税金がかかるので、手元に残るのは16万円ほどです。
一方、NISA口座で同じように利益を得たとしても、20万円の利益に税金がかからず、まるまる20万円が手元に残ります。非課税の効果としてリターンが増え、資産形成を後押ししてくれるのがNISAなのです。
厳選されたおすすめ商品が買える
2つ目のメリットは、 厳選された商品が買える点 です。NISAには、コツコツと資産形成ができるつみたて投資枠と、幅広い商品で運用できる成長投資枠の2つがあります。このうち、 投資初心者におすすめなのがつみたて投資枠 です。
元本割れのリスクを軽減しつつ、安定的な資産形成を行うためには、長期の積立・分散投資が有効。つみたて投資枠では、金融庁が認めた長期・積立・分散投資に適した投資信託のみが揃っています。
少額から始められる
3つ目のメリットは、 少額から始められる点 です。投資初心者におすすめのつみたて投資枠では、「積立投資」を行うという決まりがあります。積立投資とは、定期的に一定額で購入を続ける投資方法で、元本割れのリスクを抑える効果があります。
金融機関によっては月100円〜1,000円程度からの積立も可能 なので、負担なく投資をスタートできるのです。
投資枠を再利用できる
4つ目のメリットは、 投資枠を再利用できる点 です。これまでのNISAでは、NISA口座内で購入した商品を売却しても空いた枠を再利用できませんでした。一方、新NISAで新設された生涯投資枠は再利用が可能です。 仮に生涯投資枠が上限まで達したとしても一部の資産を売却すれば、翌年には空いた分に再び投資できるようになります。
なお、復活するのは購入時の金額(=簿価)です。購入時に100万円で購入した資産を150万円で売却したとしても、翌年に復活するのは100万円分の生涯投資枠ということになります。
NISAのデメリット
NISAにはメリットがある一方、デメリットもあります。NISAを始める前に必ず知っておきたい、デメリットや注意点を解説します。
この目次でわかること
損益通算ができない
繰越控除ができない
旧NISAから移管できない
損益通算ができない
1つ目のデメリットは、 損益通算ができない点 です。損益通算とは、同じ年に発生した利益から損失を差し引ける制度のことです。 NISA口座で出た損失は、税務上ないもの とみなされてしまうので、損益通算ができません。
例えば、課税口座で30万円の利益と10万円の損失が出た場合、差し引きした20万円に対してのみ税金がかかります。一方、課税口座で30万円の利益、NISA口座で10万円の損失が出た場合は、課税口座で出た利益30万円すべてに対して税金がかかります。
このように、NISA口座での損失はなかったものとして扱われる点には注意が必要です。
繰越控除ができない
2つ目のデメリットは、 繰越控除ができない点 です。繰越控除とは、同じ年の利益から損失を差し引いた結果、損失の方が大きかった場合に残りの損失を翌年以降最長3年間にわたり繰り越すことができる制度のことです。
繰り越された損失は、翌年以降の利益と損益通算が可能です。ただし、先述の通り、NISAで出た損失は税務上ないものとみなされてしまうので、繰越控除もできません。
旧NISAから移管できない
3つ目のデメリットは、 旧NISAからの移管ができない点 です。旧NISAではつみたてNISAは20年間、一般NISAは5年間の非課税期間の定めがありました。新NISAがスタートするまでは、非課税期間終了後に翌年の非課税投資枠に移管し、非課税期間を更新させることができたのです。
新NISAでは非課税期間が無期限となったため、このロールオーバーの考え方はなくなりました。 また、旧NISAと新NISAは別の制度として切り離されているため、旧NISAの商品を新NISAへ移管することはできません。
2024年以降に非課税期間の終了を迎える 旧NISAの商品は、課税口座に移管するか、売却するか、運用計画を立てる必要があります。
NISAを始める手順
実際にNISAを始めるにはどうすればいいのでしょうか。具体的な手順を確認します。
この目次でわかること
口座を開設する
金融商品を選ぶ
少額からスタート
口座を開設する
NISAで投資を始めるには、金融機関にNISA口座を開設しなくてはなりません。 NISAは1人1口座、つまり選べる金融機関も1つ です。
NISA口座を開設できる金融機関は大きく分けて銀行と証券会社があります。銀行は、給与振込口座を設定しているところであれば、資金の移動をせずにすぐに運用を始めることができます。
しかし、取り扱い商品は投資信託のみと限定的。幅広い商品に投資できるようになった新NISAですから、証券会社を選んでおくことで、より柔軟な投資に対応ができます。
金融商品を選ぶ
NISAをこれから始める方なら、まずはつみたて投資枠の活用を検討しましょう。 金融庁の厳しい基準をクリアした投信が揃っているので、商品選びで失敗しにくくなっているのが魅力です。
その中でも、積極的に運用したい方であれば、米国株式型や全世界株式型の投信を、リスクを抑えた運用をしたい方であれば複数の資産を組み合わせて投資するバランス型の投信を選ぶといいでしょう。
少額からスタート
まずは少額からつみたて投資枠で積立投資をスタートしましょう。月100円でも200円でも、無理のない範囲で始めることが大切です。投資に慣れてきたり、資金に余裕が出てきたりしたタイミングで、積立金額を増額を検討してください。
NISAを上手に活用するポイントは、つみたて投資枠でのコツコツ運用を継続すること です。途中でまとまった資金ができたら成長投資枠で、投信積立以外の投資にも挑戦するという活用がおすすめです。
まとめ
NISAは少額から始められ、投資で得た利益が非課税になるという大きなメリットがあります。投資初心者にとっても始めやすい制度なので、本記事を参考にしながら少しずつ資産形成を進めていきましょう。NISAの仕組みをしっかり理解し、将来のための資産作りに役立ててください。