NISAはデメリットしかない?本当の短所と対策を徹底解説

NISA

公開日:2025年3月6日

NISAって デメリットしかない?

NISA(少額投資非課税制度)は資産形成を支援する人気の制度ですが、一部では「デメリットしかない」といったネガティブな意見も見かけます。本記事では、NISAのデメリットを具体的に掘り下げ、誤解を解消しつつ、読者にとって最適な投資方法を見つける手助けをします。

NISAの概要

NISAのデメリットに目を向ける前に、NISAとはどのような制度なのか、改めて確認しておきましょう。

この目次でわかること

  • NISAとは?

  • NISAが人気の理由

NISAとは?

NISAとは、 「少額非課税投資制度」のことで、投資で得た利益が非課税になる制度 です。通常の投資では、利益に約20%の税金がかかりますが、NISA口座では非課税です。税金がかからない分、より多くの利益を手に入れることができ、資産形成を有利に進めることができます。

NISAは、2024年に制度が新しくなり、年間投資枠や投資対象の異なる「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を併用できるようになりました。つみたて投資枠で購入できるのは、金融庁が認めた長期・積立・分散投資に適した投資信託のみです。コツコツと資産形成をするのに向いている制度です。

一方の成長投資枠で購入できるのは、投資信託のほか、株式(国内・海外)、J-REITなど幅広い投資先への投資が可能です。つみたて投資枠では購入できない商品への投資が可能になります。

NISAが人気の理由

制度の改正により、ますます人気が高まっているNISA。その理由は、なんといっても税制優遇にあります。現在、日本において非課税で投資できる制度は、NISAと確定拠出年金(代表的なものにiDeCo、後述)の2つしかありません。資産形成を有利に進められるという点はもちろん、NISAで購入できる投資信託は月100円程度からの少額で手軽に始められる点も人気を後押ししています。

「NISAはデメリットしかない」と言われる理由

NISAは人気を集める制度である一方で、ネガティブな意見も一定数あります。どのような理由なのでしょうか。

この目次でわかること

  • 投資に期待しすぎた

  • SNSやブログでの声

投資に期待しすぎた

2024年に制度が新しくなると話題を集めたNISA。制度が始まってから1年ほど経ちました。2024年年初からNISAを始めた人にとってはどのような年だったのでしょうか。

日経平均に注目すると、2024年は値動きの荒い年でした。8月には米国の景気悪化懸念や円高の進行などによる急落もありました。そもそも、相場は投資のプロでも予想するのは困難です。 NISAで短期的な利益を追求した人や、「NISAは話題の制度だから、やれば必ず儲かる」と信じてしまった人は、思うように結果が出ない ということもあったでしょう。

SNSやブログでの声

SNSやブログを見ると「NISAはデメリットが多い」という意見も見かけます。実際、NISAにはメリットだけではなくデメリットもあるというのは事実です。しかし、全ての情報を鵜呑みにしてデメリットがあるからNISAをやるべきではないと思うのは早計です。 デメリットも含め、正しく制度を理解する必要があります。

NISAのデメリット

NISAには大きなメリットがある一方で、デメリットもあります。「こんなはずではなかった」と後悔する前に、どのようなデメリットがあるのか確認しましょう。

この目次でわかること

  • 損益通算や繰越控除ができない

  • 値上がりしないと非課税の効果がない

  • 制度上の制約がある

損益通算や繰越控除ができない

1つ目のデメリットは、 「損益通算や繰越控除ができない」 という点です。

損益通算とは、同じ年に発生した利益から損失を差し引ける制度のことです。課税口座であれば利益と損失を相殺して課税額を圧縮できるのですが、非課税のNISA口座ではこれができません。

どういうことかというと、例えば、 課税口座で30万円の利益と10万円の損失が出た場合、税金がかかるのは差し引きした20万円に対してのみ です。一方、 課税口座で30万円の利益、NISA口座で20万円の損失が出た場合、NISA口座での損失は無かったものとみなされ、課税口座で出た利益30万円すべてに対して税金がかかってしまう のです。

また、損失を最長3年間にわたり繰り越すことができる繰越控除も適用できません。このように、NISA口座で損失が出ると、課税面で不利になる場合があるのです。

値上がりしないと非課税の効果がない

2つ目のデメリットは、 「値上がりしないと非課税の効果がない」 という点です。NISAで得られる利益の種類には、値上がり益や分配金・配当金などがありますが、なかでも大きな成果を得られる可能性が高いのが値上がり益です。

NISAは、運用がうまくいった場合の値上がり益が非課税となるのがメリットです。ですから、NISAではそもそも、運用がうまくいかないと非課税というメリットを活かせないのです。

制度上の制約がある

3つ目のデメリットは 「制度上の制約がある」 という点です。NISA口座では年間投資枠や生涯投資枠が決められていますし、つみたて投資枠では金融庁の定めた商品しか購入できません。

また、 NISA口座は1人1口座しか開設できないというルールもあります。 課税口座のように、複数の証券会社に口座を作りそれぞれで異なる商品に投資するといったことはできないのです。NISAには数々の制約があり、使いにくさを感じる人もいるでしょう。

NISAのデメリットを補う活用法

複数のデメリットがあるNISAですが、活用方法によってはそのデメリットを補うことができます。効果的な活用術をご紹介しましょう。

この目次でわかること

  • 損失は出さずに利益を出す

  • 「長期・積立・分散」を徹底する

損失は出さずに利益を出す

先述のように、NISA口座で損失が出ても損益通算や繰越控除ができません。また、利益が出なければ非課税のメリットもありません。つまり、NISA口座のメリットを最大限享受するためには、 「損失は出さずに利益を出すこと」が何よりも大切 なのです。

当たり前のことのように聞こえますが、この当たり前のことを実践できれば、NSIA口座においてのデメリットを解消することができるのです。

「長期・積立・分散」を徹底する

NISAにおいて損失を出さずに利益を出すためには、「長期・積立・分散」投資を実践することです。金融庁のデータによると、過去の一定期間において、投資先の資産や地域を分散させ積立投資を行った結果、5年保有では元本割れするケースがあった一方、20年間の長期にわたる保有では元本割れとなるケースはありませんでした。

運用の途中では、大きな値動きがあったり、含み損を抱えることもあるでしょう。でも焦ってはいけません。 損失を出さない投資のためには、値動きに一喜一憂せず、淡々と積立を行なうことが重要 です。

20年の保有期間では、投資収益率2~8%(年率)に収斂。

20年の保有期間比較グラフ

出典: 金融庁

NISA以外の選択肢:iDeCo

資産形成の税制優遇制度は、NISA以外にもiDeCoがあります。違いを確認しましょう。

この目次でわかること

  • iDeCoとは

  • iDeCoとNISAの使い分け

iDeCoとは

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、確定拠出年金の1種。 確定拠出年金とは、運用の成果を将来年金として受け取ることのできる税制優遇制度です。 事業主が掛金を積み立てる福利厚生としての「企業型」と、個人が任意で加入できる「個人型(iDeCo)」があります。

企業型は勤務する会社にその制度が採用されていなければ加入できませんが、iDeCoは自分の意思で加入でき、誰もが利用できます。自分で掛金を積み立てて運用し、60歳以降になれば年金のように資産を受け取ることができる、老後の資産形成を目的とした制度です。

iDeCoのメリットは、「積立時」「運用時」「受取時」の3段階で税制優遇を受けられる点です。運用益が非課税となるNISAと比較すると、iDeCoは運用中だけではなく、積立時と受取時にも税制優遇を受けられるため、より有利に資産形成を行うことができるのです。

iDeCoとNISAの使い分け

iDeCoは老後に向けた資産形成を行うという性質上、原則として60歳になるまでは資金を引き出すことができません。いつでも資金を引き出せるNISAと比較すると、自由度が低いのがデメリットでしょう。ですから、 まずはNISAで積立投資をスタートさせ、資金に余裕のできた30〜40代頃からiDeCoで老後のための資産形成に取り組むのがおすすめです。

結論:まずは長期でNISAをやるべき

NISAのデメリットを心配している人でも、長期の積立投資でデメリットを克服する運用を始めましょう。その理由をおさらいします。

この目次でわかること

  • 長期投資でリスクコントロール

  • NISAとiDeCoを上手く使い分けよう

長期投資でリスクコントロール

NISAを利用するなら、まずはつみたて投資枠で積立投資を行いましょう。毎月一定額を積み立てることで、リスクを抑えた運用が可能です。

人生100年時代を見据え、投資で「お金に働いてもらう」のは必須のリスクコントロール術です。安定的な資産形成を期待できる積立投資は、誰もが取り組むべき資産運用なのです。毎月のお給料から無理のない金額を積み立てていき、10年、20年、それ以上の長いスパンで運用しましょう。

NISAとiDeCoを上手く使い分けよう

積立投資を行う際には、税制優遇のあるNISAやiDeCoを最優先で使いましょう。できることなら両方を活用するのがベストです。

ただ、資金に余裕がないのであれば、まずはいつでも資金の引き出しが可能なNISAで、つみたて投資枠を利用し少額から積立投資を行うのがおすすめです。両方の制度の違いを理解し上手に使い分けましょう。

まとめ:NISAのデメリットを理解して賢く選択を

「NISAはデメリットしかない」という意見は一部正しい部分もあります。一方で、積立投資で長期の資産運用に取り組み「損失を出さず利益を生み出す運用」を行えば多くのメリットを享受できます。本記事で紹介したデメリットをしっかり理解したうえで活用しましょう。

執筆酒井 富士子

経済ジャーナリスト/金融メディア専門の編集プロダクション・株式会社回遊舎 代表取締役。日経ホーム出版社(現日経BP)にて「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長を歴任。 リクルートの「赤すぐ」副編集長を経て、2003年から現職。「お金のことを誰よりも分かりやすく発信」をモットーに、暮らしに役立つ最新情報を解説。近著:「知りたいことがぜんぶわかる!新NISA&iDeCoの超基本」楽天kobo電子書籍awardの大賞を受賞。