投資信託を始めたものの、思ったようなリターンが得られない、あるいは運用成績に不満を感じている方は多いのではないでしょうか。SNSやブログなどで「投資信託はやめたほうがいい」という意見を目にし、不安に感じることもあるでしょう。本記事では、投資信託をやめるべきケースと続けるべきケースをわかりやすく整理し、次に取るべき行動を提案します。
投資信託とは?基本の確認
投資信託を購入したけれど、実は商品の特性をよくわかっていないということはありませんか?投資信託の基本を改めて確認しましょう。
この目次でわかること
- 投資信託の仕組み
- 利益の種類
- 3つの手数料
- 投資方法の種類
投資信託の仕組み
投資信託は、多くの投資家から資金を集め、プロが資金を運用する金融商品です。 投信やファンドとも呼ばれます。
集めた資金をどのような対象に投資するかは、商品ごとの運用方針に基づいて、投資のプロであるファンドマネジャーが選定します。投資家は日々の値動きを細かくチェックする必要がなく、少ない資金で購入できるため、投資初心者でも始めやすいという特徴があります。
利益の種類
投資信託で得られる利益は2種類 あります。
- 投信の価格が購入時よりも高くなったタイミングで売却すると得られる「値上がり益」
- 運用によって得た収益を決算ごとに投資家に分配する「分配金」
メインの利益は値上がり益です。ただし、投信を購入したからといって必ず値上がり益が手に入るわけではありません。価格が購入時より下がり元本割れするリスクもあります。なお、分配金については出ない商品もあります。
3つの手数料
投資信託は、3つのタイミングで手数料が発生します。
- 購入時
- 保有中
- 売却時
どのタイミングでどれくらいの手数料が発生するのかは、事前に必ず確認したい項目です。
購入時にかかる手数料
まず、購入するときにかかる「販売手数料」です。これは、 販売会社が投資家に対し、商品販売の事務手続きをする対価 です。一般的には、購入額の3%程度です。最近では、販売手数料がかからない「ノーロード」と呼ばれる商品も増えています。
保有中にかかる手数料
次に、保有中にかかる「信託報酬」です。これは、 資産運用を行う運用会社、販売会社、信託銀行に対して支払われる対価 。金額は年率0.1%~2.5%程度で設定されており、投信を保有している間は、投信の資産から毎日、日割りで少しずつ引かれます。
売却時にかかる手数料
最後は、売却時にかかる「信託財産留保額」です。投資信託は、株や債券などで資産運用をしており、常に現金の用意があるわけではありません。投信を解約する投資家に売却代金を支払うためには、これまで運用していた資産を換金しなくてはなりません。
引き続き投信を保有する投資家に不利益が生じないよう、 解約する投資家が換金のためのコストを負担するために設定されてるのが信託財産留保額 です。一般的には投信の価格(基準価額)の0.1〜0.3%程度ですが、信託財産留保額が設定されていない投信もあります。
投資方法の種類
投信の買い方は、一度に購入する「一括投資」と、定期的に一定額を購入する「積立投資」の2種類 があります。一括投資は、1口=1万円前後から購入でき、複数口をまとめて購入することも可能です。
積立投資は、証券会社によって設定できる金額は異なりますが、ネット証券であれば月100円〜1000円程度の少額で始められます。
投資信託の種類
投資信託の種類は、大きく「インデックス型」「アクティブ型」「バランス型」の3つに分類できます。それぞれの特徴を理解しましょう。
この目次でわかること
- インデックス型とは
- アクティブ型とは
- バランス型とは
インデックス型
インデックス型は、 特定の指数(ベンチマーク)に連動することを目指すタイプの投信 です。代表的なものに、日本株式の指数である「日経平均株価」や「TOPIX」、米国株式の指数である「S&P500」や「NYダウ」、先進国株式の指数である「MSCIコクサイ・インデックス」などがあります。
市場の値動きとの連動を目指すので、市場の成長と同等の運用成果が期待できるのが特徴です。
アクティブ型
アクティブ型は、 運用会社が独自に銘柄選定や資産配分を行い、指数を上回る運用成果を目指すタイプの投信 です。運用次第では高いリターンが期待できる一方で、リスクが高めの商品もあります。
ファンドマネジャーが投資先を選んだり売買の判断を行う手間がかかる分、インデックス型の投信と比較するとコストが高くなる傾向があります。
バランス型
バランス型は、 国内外の株式や債券、REITなどの複数の資産、国内・先進国・新興国などの複数の地域への投資を1本にまとめたタイプの投信 です。組み入れている資産や比率によってリスクが異なり、一般的に株式やREIT(後述)の比率が高いとリスクも高くなる傾向があります。
代表的なものに、国内外の債券と株式に均等に投資する「4資産均等タイプ」やそこに新興国やREITを加えた「8資産均等タイプ」があります。
投資信託をやめたほうがいいケース
投資信託を購入した方の中には、本当にこれでよかったのかと不安に思っている方もいるでしょう。投資信託をやめるべきケースを紹介します。
この目次でわかること
- 信託報酬が高すぎる場合
- リスク許容度に合わない商品を選んでいる場合
信託報酬が高すぎる場合
まず、信託報酬が高すぎるケースです。 信託報酬は、投信を保有している間、投信の資産から毎日、日割りで少しずつ引かれます。 ですから、長期運用になるほど、信託報酬のほんの少しの差が将来の資産額に大きな影響を与えます。
もし投信を購入したものの、思ったほど投信の運用成果が出ていないという場合、原因の一つとして信託報酬の高さが考えられます。 そのような場合には、同じ資産タイプで、より信託報酬の低い投資信託に乗り換えることを検討してみましょう。
リスク許容度に合わない商品を選んでいる場合
投資信託は商品ごとにリスクが異なります。一般的に、積極的に運用するアクティブ型よりも、指数に連動するインデックス型や、株式だけではなく債券や他の資産も組み込んでいるバランス型の方が、リスクは低く抑えられています。
自分のリスク許容度を超えるような商品を保有しているのであれば、リスクの低い他の商品での運用を検討すべきでしょう。また、ライフステージの変化によってリスク許容度も変化します。節目を迎えるたびに、資産運用を見直し、より適した投資手段があれば切り替えるように心がけましょう。
投資信託で失敗しないためのポイント
投資信託での資産運用は、ただ始めればいいという訳ではありません。失敗しないためのポイントを押さえましょう。
この目次でわかること
- 「長期」「積立」「分散」を守る
- 低コストの投資信託を選ぶ
- 定期的にポートフォリオを見直す
- 市場の変動に惑わされない
「長期」「積立」「分散」を守る
元本割れのリスクを軽減しつつ、 安定的な資産形成を行うためのキーワードは「長期」「積立」「分散」 です。
投信は、1本でさまざまな資産への分散投資ができるのが特徴。例えば、日経平均株価に連動するインデックス型の投信であれば、指数を形成する日本企業225銘柄へ投資するのと同じ効果を得られます。
このように分散の効果に優れた投資信託を、長期的に積立投資を行うことで有利に資産形成をできる可能性が高まります。
低コストの投資信託を選ぶ
投資をする際には、 コスト意識がとても重要 です。投信の保有中にかかる信託報酬は、投信の資産から毎日、日割りで少しずつ引かれます。ですから、長期運用になるほどコストが積み上がり、信託報酬のちょっとの差が将来の資産額に大きな影響を与えます。
例えば、米国株式の投信を購入したいと思ったなら、S&P500に連動するインデックス投信を複数比較して、信託報酬の違いに注目しましょう。
どの商品にも大きな違いはなく、決め手に欠けるようであれば、最も信託報酬の低い投信を選ぶようにしましょう。コストを抑えることは、よりよい運用成果に直結します。
定期的にポートフォリオを見直す
投資における「ポートフォリオ」とは、資産の組み合わせや、その比率のことを指します。 例えば、自分のリスク許容度に合わせてA投信を50%、B投信を50%でポートフォリオを設定し、購入したとします。
その後、A投信が値上がりし、A投信60%、B投信40%に比率が変化したとしましょう。最初に定めたポートフォリオが崩れてしまっており、その人のリスク許容度に合った資産運用ではなくなっている状態といえます。
ですから、 資産運用は一度購入したら終わりではなく、定期的な見直しが必要 です。少なくとも年1回はポートフォリを確認し、当初に設定したポートフォリになるよう調整する「リバランス」が必要です。リバランスとは、先ほどの例でいうと、A投信を一部売却したり、B投信を買い増ししたりして、50:50の比率に戻す作業のことです。
同時に、当初設定したポートフォリオが今の自分のリスク許容度に合っているかも確認しましょう。もし自分の状況とズレが乗じている場合には、ポートフォリオ自体を変えることも必要です。
市場の変動に惑わされない
繰り返しになりますが、投資信託で積立投資を行う際は、長期的な視点で行うことが大切。価格が急落したからといって、焦って売却するのは禁物です。「長期的にみれば、世界経済は必ず成長する」という前提に立ち、短期的な価格変動に一喜一憂しないことが重要です。
投資信託以外の選択肢
投資信託を選ばない場合、他にはどのような運用商品の選択肢があるのでしょうか。一部をご紹介します。
この目次でわかること
- 個別株
- REIT
- 債券
個別株
まずは個別株です。通常、数十万円〜数百万円のまとまった資金が必要となるため、 余剰資金で行うのがおすすめ 。個別株は自分で銘柄を選ぶ必要がありますが、銘柄選びに成功すれば高いリターンを狙うことができます。個別株で得られる利益には、値上がり益のほか、配当金や株主優待もあります。配当金が高い銘柄を選んだり、自分の欲しい商品が株主優待でもらえる銘柄を選んだり、投資信託とは違った楽しさも味わうことができます。
REIT
次に、REIT(リート)です。 REITとは、不動産投資信託のことです。 日本の不動産投資信託をJ-REITといいます。投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなどの不動産を購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する商品です。
REITも投資信託に分類されるのですが、取引方法などは株式に似ています。一般的な投資信託は、1日1回、市場が閉まった後にその日の価格が決まりますが、REITは上場しており取引時間中は株式のように常に値動きがあります。購入するには数万円〜数十万円のまとまった資金が必要な点も株式と似ています。
REITのメリットは、高い利回りが期待できる点です。REITは不動産の賃料が主な収益源となっており、この大半を分配金として出す仕組みのため、高い分配金利回りが期待できるのです。
債券
最後は債券です。 債券は、国や地方自治体、民間企業などが資金を調達するために発行する有価証券 です。債券には満期が設定されており、投資家は、満期が訪れるまでは一定期間ごとに利子を受け取ることができます。満期が来れば額面が戻ってきます。これを償還といいます。
ただし、発行体に利子や償還金を支払う能力がなくなってしまった場合などに、元本割れとなるリスクがあります。債券にもさまざまな種類がありリスクも異なるので、自分に合った債券を探す必要があります。
まとめ
投資信託をやめるべきか悩んでいる方にとって、重要なのは冷静に判断することです。コストや運用成績を定期的に見直し、自分の目的に合った投資になっているかどうかを考えましょう。また、やめると決断した場合でも、他の選択肢を活用することで資産形成を続けることができます。投資信託の特徴を理解し、賢く資産運用を行いましょう。