つみたてNISAで資産運用を始めたけれど、急な出費やライフプランの変更で引き出しを考えることもあるでしょう。ただし、つみたてNISAは非課税メリットを活用する制度のため、引き出す際には注意が必要です。本記事では、つみたてNISAの引き出し方法や注意点をわかりやすく解説します。さらに、引き出しの影響やベストなタイミングについても解説するので、迷っている方はぜひ参考にしてください。
つみたてNISAで資金を引き出す基本的な方法
つみたてNISAは2018年から2023年まで利用できたNISA(少額投資非課税制度)の制度です。 積み立てを始めた年から20年間で満期がやってきます。
しかし、その前でも、積み立てたお金はいつでも引き出すことができます。しかし、加入者の中にも「具体的な引き出し方法についてはよくわかっていない」という人は少なくないでしょう。
そこでまずは、つみたてNISAで資金を引き出す基本的な方法である金融機関での操作手順について説明していきましょう。
この目次でわかること
金融機関の操作手順
手順①:投資信託の売却
手順②:売却代金の受け取り
手順③:資金の引き出し
引き出す際に手数料はかかるの?
金融機関の操作手順
つみたてNISAにおける「引き出し」とは、 運用している資産を売却して現金化したものを引き出すこと を指します。引き出しは各金融機関のウェブサイトやアプリから簡単に行うことができます。
金融機関ごとに細かな手順は異なりますが、一般的には以下の手順を踏むことで、つみたてNISAで積み立てた資金を引き出すことできます。
手順①:投資信託の売却
まず、つみたてNISA口座で保有している投資信託を売却しましょう。
売却する際は、利用している金融機関のマイページにログインし、 保有商品の中から売却したい商品を選択 します。売却する口数や金額を入力し、問題がなければ売却注文を出して完了です。
手順②:売却代金の受け取り
売却手続き完了後、 通常は2〜7営業日(金融機関ごとに異なる)で売却代金が証券口座に入金 されます。
手順③:資金の引き出し
最後に、売却代金を引き出しましょう。まず、利用している金融機関のマイページにログインし、出金先の銀行口座、出金金額、取引暗証番号を入力することで出金手続きを行い、指定の銀行口座への振込を完了させます。
振込後は、即日出金が可能な場合もありますが、手続きの時間帯によっては着金が翌営業日以降となることもあります。 土日や祝日を挟むとさらに日数を要するため、余裕をもった対応が大切です。
引き出す際に手数料はかかるの?
一般的には、NISA口座での投資信託の売却時に手数料はかかりません。
しかし、 一部の投資信託では売却時に「信託財産留保額」という手数料がかかる場合があります。 そのため、事前に信託財産留保額の有無を確認しておくと良いでしょう。
また、証券口座から指定の銀行口座へ出金する際に、金融機関によっては出金手数料が発生する場合があります。
そのため、事前に各金融機関の公式ウェブサイトで出金手数料の詳細を確認しておくと安心です。
つみたてNISAの引き出し時の注意点
つみたてNISAは「いつでも引き出せる」ため、急な出費や資金が必要な場合に対応できます。また、住宅資金、教育資金、老後資金などライフイベントに合わせて柔軟に活用することができる点も大きな魅力です。
その一方で、途中で引き出すことによるデメリットもあるため、見ていきましょう。
この目次でわかること
金融機関の操作手順
非課税枠が復活しない
複利効果の喪失
非課税枠が復活しない
つみたてNISAでは、 年間40万円までの投資に対して非課税で運用益を受け取ることができます。
ただし、 一度売却して引き出してしまうと、その分のまた非課税枠で投資ができるわけではありません。 既につみたてNISA制度は制度が終了していますし、新NISAに引き継ぐこともできません。
複利効果の喪失
長期の積立投資では、運用で得た収益を当初の元本に再投資することで「複利効果」を得ることができます。
特につみたてNISAでは、運用益が非課税となるため、 運用で得た収益を丸ごと再投資に回すことができます。 これによって複利効果の恩恵を最大限享受することが可能です。
しかし、 途中で資金を引き出してしまうと、その後得られるはずだった再投資の機会が失われてしまうため、複利効果によるメリットが大きく減少してしまいます。 その結果、長期で見た場合の資産の増加ペースが鈍化する可能性があります。
引き出さずに運用を続けるメリット
もちろん、必要なタイミングでつみたてNISAで積み立てた資金を引き出すことは悪いことではありません。ただし、上述した注意点があることは留意しておく必要があります。
また、引き出さずに運用を続けることには以下のメリットもあるので、見ていきましょう。
この目次でわかること
長期運用による資産成長
非課税枠の有効活用
長期運用による資産成長
つみたてNISAは、 途中で引き出さずに長期で運用を続けることによって複利効果が働き、効率的に資産形成を行う ことができます。
上のグラフは、定期預金(利回り0.02%)とつみたてNISA(利回り3%)で、毎月5万円を20年間積み立てた場合の資産推移を示したものです。
定期預金で積み立てた場合の資産額が約1200万円なのに対して、つみたてNISAで積み立てた場合の資産額は約1640万円と、 20年間で400万円以上の差 が生じています。
この結果を見れば、いかに複利効果が絶大であるかが、よくわかるでしょう。複利効果は運用期間が長期になればなるほど大きくなります。
そのため、将来の老後資産を形成したい場合などには、途中で引き出さずに、 できる限り長期で運用を続けていくことをおすすめ します。
非課税枠の有効活用
上述した通り、 つみたてNISAの非課税枠は一度使うと売却しても翌年に復活しません。 そのため、使った非課税枠を最大限に活用するには、途中で引き出さずに長く運用を続けることが重要です。
引き出すべきタイミングと判断基準
つみたてNISAで、途中で資金を引き出す際には、いくつかの重要な判断基準があります。
ここでは「緊急時の対応」「運用方針の変更」「市場環境を考慮したタイミング」の3つの視点から、引き出すべきタイミングについて考えてみましょう。
この目次でわかること
緊急時の対応
運用方針の変更
市場環境を考慮したタイミング
緊急時の対応
病気や失業など、避けられない事情で資金が必要な場合 は、つみたてNISAで運用している資金を引き出すことが必要になることもあります。
ただし、この場合には「どのくらい急を要しているか」「他に資金源がないか」などをよく考えたうえで、 必要最小限の金額だけを引き出すように心掛けましょう。
運用方針の変更
運用方針を変更する場合も、資産を引き出すタイミングの一つとなります。
特に、 現在のポートフォリオが自分のリスク許容度や目的に合わなくなった場合 には、その資産を引き出し、新NISA口座のほうで、もっと適した投資信託や他の金融商品に切り替えることで、今後の運用を効率的に進めることができます。
市場環境を考慮したタイミング
市場の状況に応じて、資産の一部を引き出すことも考えられます。
例えば、急激な市場の下落や経済不安が広がる場面では、つみたてNISAの資産を一時的に引き出すことを検討しましょう。
特に、大きな損失を被っている場合には、一時的に現金化してしまうことも、資産防衛のうえでは有効な手段となります。しかし、この判断は非常に慎重に行うべきで、 短期的な市場の変動に過剰に反応しないように心掛けましょう。
まとめ
つみたてNISAは、引き出しが自由にできる柔軟な制度ですが、引き出すことで非課税枠が復活しないなどの注意点があります。そのため、引き出す際には制度のメリット・デメリットや、長期運用の重要性をしっかり理解しておくことが大切です。特に、緊急時を除いては、可能な限り運用を続ける方が将来的な資産形成にプラスとなるでしょう。この記事を参考に、引き出しを検討する際の判断材料にしてください。