30代の貯金はいくらあると安心? ライフステージごとの目安を解説

お金の知識

公開日:2025年5月15日

貯金 いくらあれば安心 30代

30代になると、結婚や子育て、住宅購入など大きなライフイベントが増え、貯金についての不安を感じる人も多いのではないでしょうか。「みんなはどれくらい貯金しているの?」「自分は足りているの?」と気になる人もいるはずです。本記事では、30代の平均貯金額やライフステージ別の貯金目安を紹介し、安心できる貯金額を考えるための指標を提供します。さらに、貯金を増やすための実践的な方法も解説するので、これから計画的に貯金をしたい人はぜひ参考にしてください。

30代の平均貯金額と中央値

J-FLEC(金融経済教育推進機構)の2024年の調査によると、 30代の平均貯金額は468万円 です。この468万円は預貯金のみの数字です。株式や投資信託などの金融資産も含めた30代の金融資産保有額を見てみると、 平均値は909万円、中央値は360万円 です。

この目次でわかること

貯金額の平均値と中央値の違いとは?

30代の平均貯金額と金融資産保有額

出典: J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」

貯金額の平均値と中央値の違いとは?

上の表からもわかるとおり、 平均値と中央値には大きく差があります。

平均値は一部の極端な値に影響されやすいという特徴があります。

つまり、30代で1億円の貯金を持っている人がいた場合、この人の貯金額は例外的なものですが、それが計算に反映されてしまうので、平均値も高くなるということです。それに対して中央値は、全員の貯金額の中央にある数字ですので、例外的な数字が与える影響が小さいです。ということは、 中央値のほうが実態に近い数値 となります。

自分の貯金額や年収などが同世代と比べて多いのか少ないかを確認したい場合は、平均値ではなく、中央値を確認しましょう。

30代が安心できる貯金額の目安

それでは、30代が安心できる貯金額の目安を確認してみましょう。

この目次でわかること

生活防衛資金の目安

生活防衛資金の目安

貯金額はひとまず、 生活費の6カ月分を確保するのが基本 です。

人生のどこかのタイミングでは失業や、急な病気・事故などによる休職が自分の身にふりかかってくるかもしれません。

会社員の場合、失業には雇用保険の失業手当が、病気やケガには健康保険の傷病手当金がありますが、これらの制度で支給されるお金はそれまでの収入の全額ではありません。このときに貯金がまったくないと、生活に困窮してしまうかもしれません。

また、30代にもなれば、冠婚葬祭などで突然お金が必要になることも増えてきます。

現在はNISAやiDeCoなどで資産運用をする方も多いですが、NISAには急落の可能性もありますし、iDeCoには60歳まで引き出せないという特徴があります。

そのため、 なにかアクシデントがあったときにすぐに使えるお金として、ある程度は貯金を持っておく必要があります。

ライフステージ別の貯金目安

次に、ライフステージ別の貯金の目安を見てみましょう。

この目次でわかること

独身の場合

結婚・共働き夫婦の場合

子育て世帯の場合

マイホーム購入を考えている場合

独身の場合

独身時代は自由に使えるお金が多いため、計画的に貯金を増やしやすいです。独身の30代は最も貯金がしやすいライフステージなので、 まずは150万〜300万円を目標 にしてみましょう。

結婚した場合でも、子どもが生まれるまでの2人時代は人生の貯め時 です。生活防衛資金が貯まったら、将来に向けて、500万円、1000万円と目標値を設定して、最低でも手取りの2割は貯金と投資にお金を回していきましょう。

結婚・共働き夫婦の場合

結婚している場合、お金のことについて夫婦でしっかり話し合うことが重要 です。共働きの場合は、家賃や光熱費や食費など、普段の生活費はお金を出しあう世帯が多いでしょう。

お財布も貯蓄も、完全に別々に分けて生活することも一つの選択肢ですが、貯蓄という観点では、二人で力をあわせたほうが、効率が良いことの方が多いです。

二人の収入に差があった場合に、生活費や貯蓄に回す金額を2人同じにしてしまうと、どちらか一方の負担が大きくなってストレスの原因にもなりますので、コミュニケーションを取ることが重要です。

また、 子育てが始まると、妻が育休に入ったり、その後も保育園代がかかるなど、貯蓄のペースがダウンします。 直近5年以内に起こるであろうライフイベント、それ以降にかかるであろうお金を考えて、前者は貯金で、後者はNISAなど投資で備えていきましょう

子育て世帯の場合

子育て世帯、あるいは将来は子どもが欲しいと思っている夫婦の場合は、教育資金や生活費の増加を見据えた貯蓄が必要 になります。子どもの学費は大体どのくらいかかるかを確認してみましょう。

すべて公立の場合高校から私立の場合大学から私立の場合

出典:(幼稚園~高校の学費の出典: 文部科学省「子供の学習費調査」(令和5年度) 、公立大学の学費の出典: 文部科学省省令による標準額 、私立大学の学費の出典: 文部科学省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金調査結果について」

私立小学校を除けば、 最も大きな学費がかかるのは大学 です。大学の学費は公立でも4年間で約240万円、私立文系だと約410万円、私立理系だと約540万円がかかります。

子どもが2人になれば、倍のお金がかかるわけですから、これは計画的に貯蓄していく必要があります。

子どもが生まれたタイミングであれば、大学資金を準備するのに18年の期間がありますので、NISAなどでの投信積立を利用してもいいでしょう。

マイホーム購入を考えている場合

マイホームの購入を検討している場合は、頭金や住宅ローンを考慮した計画的な貯蓄が必要 です。

マイホーム購入は数千万円単位での買い物ですから、多くの人は住宅ローンを組んで購入します。その住宅ローンが30年以上続いていくことも多いわけですから、今後の世帯の収支の予測を立てたうえで貯蓄をしましょう。

住宅の値段は場所、マンションか戸建てか、中古か新築かによって大きく変わります。

2023年度のフラット35利用者調査によると、中古でも2500万円~3000万円程度、新築の場合は3500万円~5000万円以上かかる場合が多いです。

(出典: 2023年度フラット35利用者調

住宅ローンの頭金は1割~2割が目安と言われていて、それに加えて税金や手数料などの諸費用も考えると、住宅購入価格の2割~2.5割は貯蓄しておくのが理想的です。

30代が貯金を増やすための実践的な方法

最後に、貯金を増やすための実践的な方法を3つご紹介します。

貯金を増やすための実践的な方法

この目次でわかること

①固定費を削減する

②先取り貯金をする

③収入を増やす工夫をする

①固定費を削減する

貯金に回すお金を増やすためには、 収入を増やすか、支出を減らすかが重要 になります。

収入を増やすには、昇進、転職、副業などが考えられますが、人によっては今すぐに行動できることではないかもしれません。それに対して 支出を減らすことは今すぐできることが多い です。

そして、支出を減らす方法で最も効果が大きいのは、 光熱費や通信費などの固定費を見直して、毎月かかるお金を削減すること です。光熱費を安いプランや安い会社に変えて、スマホも格安SIMなどを使えば、月数千円単位で支出が削減できることも多いです。

契約の変更や乗り換えは、最初こそ腰が重いものの、一度変更してしまえば、その後はずっと何もしなくても毎月節約し続けていることになるのでオススメです。

②先取り貯金をする

手元にお金があるとどうしてもお金を使ってしまうという人は、 給与振込時に自動で貯金口座に一定額を移す設定にしてしまうといい でしょう。

月の最後に余ったお金を貯金に回すのではなく、月の最初に貯金にお金を回して、余ったお金でどう生活をやりくりするかを考えてみるということです。

人はお金があるとあるだけ使ってしまうもので、この現象は「パーキンソンの法則」という名前がついていて分析されています。

あればあるだけお金を使ってしまうのは、精神力の弱さが理由というよりも、多くの人はそうだということですね。 先取り貯金に変えるだけで、貯金ができるようになる人は多い です。

③収入を増やす工夫をする

副業やスキルアップを通じて収入を増やし、貯金の余裕を作る のも一つの手です。

たとえば、資格取得の勉強をするためにスクールに通ってみる方法などがあります。スクールに通うとなると、数十万円から百万円以上のお金がかかることもありますから、その期間は全く貯金ができないかもしれません。

ですが、 一年間貯金ができなくても、その結果スキルアップして収入を上げることができれば、その後は貯金に回せるお金も増え、長い目で見ればそちらの方が効率が良い ということもあります。

30代はまだまだ自分の能力を上げていきやすい時期なので、収入を増やす方法がないか、一考してみる価値は大きいです。

まとめ

30代の貯金額の平均値は468万円ですが、安心できる貯金額はライフステージによって異なります。まずは生活防衛資金として生活費の6カ月分を確保し、その後のライフプランに応じて貯金額を増やしていくのが理想です。無理なく貯金を増やすためには、固定費の削減や先取り貯金、投資の活用などを組み合わせることが重要です。計画的な貯蓄を心がけ、将来の安心を手に入れましょう。



執筆酒井 富士子

経済ジャーナリスト/金融メディア専門の編集プロダクション・株式会社回遊舎 代表取締役。日経ホーム出版社(現日経BP)にて「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長を歴任。 リクルートの「赤すぐ」副編集長を経て、2003年から現職。「お金のことを誰よりも分かりやすく発信」をモットーに、暮らしに役立つ最新情報を解説。近著:「知りたいことがぜんぶわかる!新NISA&iDeCoの超基本」楽天kobo電子書籍awardの大賞を受賞。