もし、がんになってしまったら、どんな治療をしてどれくらい費用がかかるのでしょうか?
がんは、以前と比べて治療による生存率が上がってきています。
しっかりとした治療を受けるために、事前に基本的な治療法について知っておくことはとても大切です。そしてもし高額な治療費がかかるなら、それに備えるお金の準備もしておいた方がよいでしょう。
そこで、がんの基本的な治療法について、過去に医療コーディネーターの高橋義人氏(株式会社M&Fパートナーズ 代表取締役)に伺ったお話を再編集し、「がん治療を知るシリーズ」としてお届けしていきます。
株式会社M&Fパートナーズ 代表取締役 高橋 義人
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略歴
1988年明治大学卒業後、外資系大手生命保険会社に23年間勤務。
ファイナンシャルプランナーとしての活動とともに、医療コーディネーターとして、がん患者さんへの情報提供やアドバイス等、治療支援活動を積極的に行っている。
その他、セミナー講師として、マネープランやがんについての講演を年間100回以上行っており、累計のセミナー受講者数は5万人を超えている。 -
講演テーマ
「生きるためのマネーセミナー がんとお金の話」
「最先端のがん治療とがんファイナンス」など
がん治療を知るシリーズ
第1回「大腸がんの治療とその費用」
(以下、高橋氏のお話しを再編集してお届けします)
1.急増している大腸がん
近年、日本では大腸がんが急増しています。国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センターのがん統計(2023)によると、死亡者数の多いがんの部位は、 男性が肺がんに次いで「大腸がん」が第2位 に、 女性は肺がんや膵臓がん、乳がんなどよりも多く第1位 となっています。
一方で、医療技術の進歩もあり、大腸がんは早期発見ができた場合、治癒も可能となってきています。40年前には30%台であった 大腸がんの5年生存率(2009~2011年)は、少し前のデータではありますが71%以上 となっています(国立研究開発法人 国立がん研究センター 地域がん登録によるがん生存率データ[1993年~2011年診断例]より)。
2.大腸がんの分類と治療
大腸がんは、大きく 結腸がん と 直腸がん に分けられます。結腸には上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸があり、日本人はS状結腸と直腸にがんができやすいといわれています。
また病期(ステージ)による分類では、 0期~Ⅳ期までの5段階 に分けられます。ステージは、がんの深さ、周りの臓器への広がり、リンパ節への転移、遠隔臓器への転移の有無により分類されます。
■ステージごとの一般的な治療
ステージ | 治療 |
0期~Ⅰ期 | 内視鏡治療 または 手術 |
Ⅱ期~Ⅲ期 |
手術
(腸管の切除)および
リンパ節郭清
(周辺のリンパ節の切除)
※がんの進行状況により手術後に抗がん剤治療 |
Ⅳ期 |
<転移先臓器含め切除可能>
手術 <元々のがんのみ切除可能> 原発巣(最初にできたがん)のみ 手術 転移巣は 抗がん剤治療(化学治療) や 放射線治療 <原発巣、転移巣ともに切除不可能> 抗がん剤治療 や 放射線治療 |
※詳しい治療方法は専門の医師にご相談ください
3.大腸がんの新しい治療法
大腸がん(Ⅰ期~Ⅲ期)の治療において、体への負担が少ない新しい手術を行うところもあります。
腹腔鏡下手術
腹腔鏡下手術とは、お腹に数か所の孔をあけて、腹腔鏡と手術器具を挿入して行う手術です。お腹の中(腹腔)には、あらかじめ炭酸ガスや空気を入れて膨らませておきます。
腹腔鏡下手術は、通常の開腹手術に比べて 手術の傷が小さいため体への負担が少なく (手術後の痛みが少なく傷跡が目立ちにくい)、 入院日数が短くてすむ というメリットがあります。
ロボット支援下手術
ロボット支援下手術とは、お腹にあけた孔にロボットアームを挿入して行う手術です。ロボットアームの操作は、コンソールから医師が3D画像を見ながら行います。ロボットアームは複雑な動きができ、人が行う腹腔鏡下手術ではできない動きが可能です。
(以上、高橋氏のお話でした)
大腸がんの治療費
最後に大腸がんの治療にどれくらい費用が掛かるのか目安となるデータを紹介します。
厚生労働省の医療給付実態調査(令和5年度)のデータをもとに計算すると、 結腸がんの入院治療の平均費用は685,504円(3割負担は205,651円)、外来治療の平均費用は44,969円(3割負担は13,491円) となっています。同様に 直腸がんの入院治療の平均費用は798,978円(3割負担は239,693円)、外来治療の平均費用は59,919円(3割負担は17,976円) となっています。
■大腸がんの治療費の平均
入院費用 | 外来費用 | |||
総額 | 3割自己負担 | 総額 | 3割自己負担 | |
結腸がん | 685,504円 | 205,651円 | 44,969円 | 13,491円 |
直腸がん | 798,978円 | 239,693円 | 59,919円 | 17,976円 |
※厚生労働省「医療給付実態調査(令和5年度)」のデータをもとに(株)LHLにて作成
入院治療となると、治療費にプラスして関連した出費も必要になり、それなりにまとまった費用が必要となります。
編集後記
がん治療を知るシリーズ、第1回目は大腸がんの治療について紹介いただきました。初期の大腸がんであれば、内視鏡手術や開腹手術のみで治療が終わり、自己負担額も20~30万円くらいですみそうです。
しかし、ステージが進むにつれ、手術と放射線治療が併用されたり、治療期間も長くなってきたりします。そうなると自己負担額も大きくなっていきます。また、最先端の ロボット支援下手術を受けると保険適用でも50~60万円くらいかかる といわれています。
初期のステージであれば、治療費を自身で負担することも難しくはありませんが、そうでなければあらかじめ貯蓄やがん保険などで備えておくことも必要となってくるでしょう。
また、経済的なことだけでなく、治癒を目指すという意味でも、やはり早期発見をすることがとても大切であるということを再確認できました。
日ごろからの健康管理とがん検診、そして、もしもの時のための経済的な準備をしっかりと行うようにしたいものです。