更新日:2025/11/05

地震保険はどれだけ役立つ?補償内容から活用法までの全知識

#損害保険
地震保険はどれだけ役立つ?補償内容から活用法までの全知識

近年、多くの住宅が被害を受けるような大きな地震が各地で起こっています。さらに、将来、大地震が来る確率も高まっているといわれていて、日本全国どの地域でも何らかの地震の脅威にさらされているといってもいいでしょう。

だとすると、住宅や家財の被害に備えて、やはり地震保険には入っておくべきなのでしょうか? でも、地震保険にはそれなりに保険料がかかります。また、はたして自分自身が被災する可能性はあるのか、そのときに地震保険はどれくらい役に立つのか、などの疑問や不安があることでしょう。

実際に、実は地震保険だけでは住宅を元通りに建て直すことはできないという事実があります。しかし、それでは地震保険は役立たずなのかというと、被災後の生活を立て直す費用を確保するという重要な役割をもっています。

ここでは、そんなふうに役割を勘違いしやすい地震保険について、正しい知識と加入の考え方を解説しています。ぜひ参考にしていただき、ご自身の状況にあった地震への備え方ができるようになってください。

1. 地震保険のメリット・デメリット

地震保険はどれだけ役立ちそうなのか? まずは、地震保険のメリットとデメリットを整理しましょう。

1-1. 地震保険のメリット

地震保険のメリットは、やはり地震の被害に備えられる保険は原則地震保険のみだということです。また、民間の保険会社だけでは責任を負えないような巨大地震に備えて日本政府が再保険し、保険金を支払う体制が整えられているという信頼性もメリットといえます。

〇地震保険のメリット

・地震や噴火、それにともなう津波による住宅の被害を補償してくれる。

・建物だけ、家財だけ、建物と家財の両方と各家庭の事情にあわせて入れる。

・日本政府が再保険し、巨大地震の補償にも備えられている。

・耐震性能の高い住宅には保険料の割引がある。

・大地震でも早期の保険金支払いに向けた特別体制がとられる。

・地震保険料控除で所得税・住民税が安くなる。

1-2. 地震保険のデメリット

地震保険のデメリットは、火災保険とセットでなければ入れないことや、実は地震保険だけでは建物を建て直したり家財を元通り買い直したりできないことです。

〇地震保険のデメリット

・火災保険に付帯するかたちでしか加入できない。

・火災保険の保険金額の半分までしか加入できない。

・保険金額には、建物は 5,000 万円、家財は 1,000 万円という上限がある。

・地震保険の支払いは 4 段階の区分しかない。

・居住地域や建物の構造によっては保険料が高い。

2. 住宅を建て直せない地震保険って、どんな保険?

前章のメリット・デメリットのように、地震の被害は地震保険でなければ補償されないといいつつ、でも建物を建て直せないって何なのでしょうか? 地震保険に入るべきなのかどうかを判断するためにも、ここでその正確な補償内容(保険の概要)を理解しておきましょう。

2-1. 地震保険の補償限度は火災保険の半分まで

地震保険は 火災保険にセットで契約する保険 なので、まずは火災保険に入っていることが前提となります。そして 地震保険で契約できる保険金額は、火災保険の保険金額の 30 50% の範囲内 と決められています。

だから、もととなる火災保険の保険金額を、住宅を建て直せる金額にしていたとしても、地震保険にはその半分しか加入できません。地震保険では住宅の建て直しはできないというのは、これが理由です。

さらにいうと、地震保険の保険金額には、建物は 5,000 万円、家財は 1,000 万円という上限があります。仮に2億円の豪邸でも、地震保険には、最高で 5,000 万円までしか加入できません。

2-2. 保険金の支払基準は4段階

地震保険の保険金の支払額は、実際の損害額に応じて決まるのではなく、損害の程度による4段階の損害区分にもとづいて決まるため4種類の補償額しかありません。したがって、被害状況によっては実際の損害に比して少ない保険金しか受け取れない場合があります。

この損害区分は、もともとは全損・半損・一部損の3区分でしたが、 2017 年1月の改定で、半損が大半損と小半損に分割されるかたちで4区分となりました。

■地震保険の保険金支払基準

たとえば、地震が原因の火災で建物が延床面積の 70% 以上消失した場合は全損となり、保険金額(火災保険の保険金額の半額、ただし時価の 50% が限度)の全額が支払われますが、 69% のときは大半損として保険金額の 60 %となります。

また、焼失が 50 %のときは大半損で保険金の 60 %が支払われますが、 49% のときは小半損で 30 %となります。損害の区分が4段階しかないため、ほんのわずかな損害の差で受け取れる保険金額に大きな差が出てくる可能性があります。

さらに、全損・大半損・小半損・一部損の保険金支払額には、時価の 100% 60 %、 30% 5% という限度もあります。そのため、火災保険を建物の再築に必要な費用=「再築価格」で契約し、その半額を地震保険の保険金にしていたとしても年数が経過して時価が下がっている建物ならば、全損でも契約した保険金額全額はもらえません。

したがって、地震保険に入るときは、建物の時価がいくらかということにも注意して保険金を設定しなければなりません。そうしないと超過した保険金額分の保険料が無駄になってしまいます。

3. 地震があったときに受け取れる保険金の事例(モデルケース)

ここで、もし地震で建物が全損になった場合に、地震保険で受け取れる保険金額と実際の建て替え費用にどんな差が出てくるかを、モデルケースをあげて具体的にみてみましょう。

■一戸建ての地震保険加入のモデルケース

図形, 多角形

自動的に生成された説明

10 年前に 2,000 万円で建てた一戸建てですが、 時価(現在の価値)は 1,500 万円 になっています。一方で、 今この家を建て直すとしたら、物価上昇などがありその費用は 2,500 万円 かかるとします。

この状態で 最大限に地震保険に加入していたとすると、今地震で全損になった場合に受け取れる保険金額は 750 万円 です。しかし、建て替えのための費用は 2500 万円なので、 このモデルケースでは地震保険の保険金では建て替えに 1750 万円足りない ということになります。

新築からの築年数による時価の減少や物価上昇等による再築価格の上昇率などによって、地震保険の保険金と建て替え費用の差は変わってきますが、いずれにしても建て替えには全然足りないということになります。

4. それでも地震保険には入っておいた方がよい4つの理由

地震保険の概要をみると、その補償は何だか不十分なように感じられます。しかし、そもそも地震保険は住宅を建て直すための保険ではなく、実は生活再建資金を得るための保険というのが本来の姿です。

このことは、財務省 WEB サイトでも「地震保険は、地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的として 」と説明されていますし、損害保険会社が責任を負いきれないような巨額な地震損害があった場合に備えて、政府が地震保険を再保険しているのもそのためです。

そういった視点で、地震保険に入っておいた方がよいといえる理由が4つあります。

4-1. 地震の被害を補償する保険は地震保険だけ

一部の少額短期保険を除き、地震による建物や家財の被害を補償できるのは地震保険しかありません。損害の一部しか補償されないとはいえ、地震のリスクに備えるには、結局のところ地震保険しかありません。

4-2. 被災したあとの生活のために必要

地震で 建物が壊れて修理をしたり家財を買いかえたりすると、そのための費用が必要 です。仮にすべての費用には足りなくても保険金が入ってくることはとても大切です。また建物が全壊してしまった場合は、仮設住宅で生活したり、まずは賃貸住宅などに入居して生活したりすることになると思いますが、その場合も 引越し費用、家具などの購入費 などがかかります。地震保険の保険金は、そういった資金に使うことができます。

4-3. 住宅ローンの当面の返済資金にできる

まだ住宅ローンが残っている建物が全壊した場合、肝心な建物がなくなってローンだけが残るという最悪の結果になることもあります。その場合、地震保険の保険金でまとまったお金が入ってきたら、そのお金を住宅ローンの返済に使うこともできます。被災しながらの住宅ローン返済という大変な状況を軽減することができます。

4-4. 地震保険は大震災で迅速に支払ってもらえる

東日本大震災や熊本地震では多くの方が被災されました。地震保険を申請する人も多くいましたが、日本損害保険協会や各損害保険会社の特別措置があり、地震保険の保険金は早期に支払いが行われました。 たとえば、熊本地震では地震発生から 2 ヶ月足らずの 6 6 日時点で、 217,625 件の事故受付に対して、調査完了が 186,400 件、保険金支払い完了が 168,589 件(保険金支払額は 2,724 億円)となっていました。

このように地震保険には、建物を建て替えられなくても、被災後の生活を立て直すための費用をまかなうという役割があります。つまり、 地震保険に入るべき理由は、地震で被災したときに生活再建費用を確保するため なのです。

5. 国や地方自治体からの生活再建資金の援助はあるのか?

自分で地震保険に入らなくても、国や地方公共団体から生活再建資金の援助はないのかというと、「被災者生活再建支援制度」があります。

この制度では、 10 世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村、 100 世帯以上の住宅全壊被害が発生した都道府県などの条件を満たした場合に、 住宅が大規模半壊以上の損害を受けた世帯に 50 100 万円が支給(単身世帯の支給額は 3/4 されます。また 住宅を再建するときにも支援金として、建設・購入で 200 万円、補修で 100 万円、賃貸で 50 万円が支給(単身世帯の支給額は 3/4 されます。

このような制度はありますが、住宅が全壊して建て直す場合でも支給額の合計は 300 万円なので、はやり生活再建資金という意味においても、自分で地震保険に入り、さらに数百万円くらいは確保できるようにしておいた方がよさそうです。

ちなみに 地震保険の「基本料率」は、都道府県や建物の構造によって異なり、保険金額 1,000 万円あたり年額 7,300 円~ 41,100 の範囲で定められています。実際の保険料は、この基本料率に保険金額や耐震割引などを反映して算出されます。

6. 地震保険の加入率は約 35%

地震で被災したあとの生活再建に必要な地震保険ですが、実際の加入率はどうなっているのでしょうか? 2024 年度の地震保険の加入率(全国平均)は 35.4% でした。火災保険の付帯率でみると 70.4% で、約 7 割が付帯していますが、そもそも火災保険にすら入っていない世帯が多いということがわかります。

地震大国日本で、たった 35% の加入率でよいのでしょうか? あなたは地震保険に加入していますか? もし未加入で、特に家族がいる世帯であれば、次章を参考にぜひ地震保険への加入を検討してみてください。

(出典)日本損害保険協会「地震保険の都道府県別加入率の推移(損害保険料率算出機構調べ)」より作成

7. 居住している住宅別、地震保険加入の考え方

それでは、地震保険に入る場合に、居住している住宅によってどのような加入の仕方をしたらよいか、その考え方を説明しましょう。

地震保険の保険料は、都道府県や建物の耐火構造によって違っていて、 保険金 1,000 万円あたり 7,300 円~ 41,100 と大きな幅があります。大地震の可能性がある地域は高く、非耐火構造の建物は高くなっています。このように保険料は決して安いものではないため、より効率的な加入法を考えるべきです。

7-1. 持ち家で一戸建ての場合

一戸建てを所有している場合は、原則、建物と家財の両方の地震保険に入ることをおすすめします。ただし、そうなると保険料も大きな金額になってしまうため、各家庭の状況に応じて建物や家財の保険金額を減額したり加入割合を調整することも必要でしょう。 たとえば、住宅ローンが残っている場合はローン残高に応じて建物の保険金額もできるだけ大きくした方がよいですし、ローンがないとか、築年数が経っていて時価が低い状況であれば、建物よりも家財を重視して入ったほうがよいでしょう。

7-2. 持ち家でマンションの場合

マンションを所有している場合は、予算が許せば建物と家財の両方の地震保険に入っておくとよいですが、どちらかというと家財を優先したよいがよいでしょう。特に最新の耐震基準をクリアしているマンションの場合は、地震により建物が大きな被害を受ける可能性は低く、家財の被害の方が大きくなりやすいからです。

4-3. 賃貸住宅の場合

賃貸住宅の場合は、一戸建てであってもマンションであっても建物は自分のものではありませんので、加入するのは家財の地震保険だけです。壊れた家財をできるだけ買い直せるようにしっかり加入しておきましょう。

また、どうしても地震保険の補償額をアップさせたいという場合、「地震上乗せ特約」 という補償があります。 これは、通常の地震保険の限度(火災保険の半額まで)を超えて、火災保険で契約している金額まで補償を広げられる仕組みです。ただし、この特約を付加すると、その分保険料も割高になるため、家計への負担も含めてよく検討する必要があります。

8. まとめ:地震保険は生活を立て直すための保険

地震保険は、最大限に保険に加入しても、建物や家財の地震時点での価値(時価)の半分までしか補償されません。したがって、建物を建て直したり家財を元通りに買い直すことはできません。しかし、地震で被災した場合には、生活を立て直すための費用が必要になってくることから、地震保険はそのためのお金を用意する役割をになっているといえます。

地震保険は、建物を建て直すための保険ではなく、生活を立て直すための保険であるということを理解して、有効に活用することをおすすめします。

※本記事は2025年10月時点の情報をもとに作成しています。

執筆山田 智英

FP(1級ファイナンシャル・プランニング技能士)/株式会社LHL くらべる保険なび担当。証券会社、保険サービス企業を経て、「くらしのお金」に関するWEBメディアの立ち上げ・運営、マネー書籍(ムック)の監修等を経験。保険やお金の情報をわかりやすく解説します。

迷ったらプロに相談!無料保険相談

あなたにピッタリの保険を一緒に見つけます。
相談は何度でも無料です。

無料保険相談はこちら
保険相談キャンペーン実施中!